方丈記

読み:ほうじょうき
品詞:固有名詞

鴨長明による随筆。奥書によれば1212(建暦2)年3月晦日(つごもり)ごろ成立。書名は文中に「その家のありさま(中略)広さはわづかに方丈」とある庵にて著されたことから言われる。すぐれた自称文学として『徒然草』と双璧を為す。

内容はおよそ四つに分かれる。序章は、人の世の無情を川の流れにたとえて、詠嘆的な調子で語り始められる。続く二章では、長明が経験した天変地異や社会変動が克明に描き出されている。特に福原遷都の箇所は詳細な見聞録である。そして第三章では長明の身辺へと話題が移る。住居の変転を述べた後、現在の住居である方丈の庵の様子を細かに言及して述べ、その草庵生活の快適さ、意味深さを感嘆する。結ぶ終章では一転して、その方丈の生活にすら疑問を抱かざるを得ない自分があらわにされ、自問自答のあげく黙してしまう。

自己の内的矛盾をさらけ出し、ぎりぎりまで自分を追いつめたところに一編の主題がある。解答できない自分を見いだし、黙してしまうところに長明の真意があったと思われる。

和漢混淆文。対句や比喩を多く使い、修辞的に整った文体である。

目次

文語文

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。

口語文

流れ行く河の流れは絶えることはなく、しかも刹那たりとも元の水ではない。水の淀んでいるところに浮かんでいる泡は、あちらでは消え、こちらでは新しい泡ができて、いつまでも同じ状態でいることはない。

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