毒ガス

読み:どくガス
品詞:名詞

化学兵器に使用される代表的なものであり、人体または動植物に対して毒性を有し、気体または気化あるいは霧状にして散布しやすい物質(現在では、常温で気体でなくてもエアゾールによって散布できる)のこと。

第一次世界大戦中に実戦化され、イープールの戦いにおいてドイツ軍が塩素ガスを使用したのが最初と言われている。この大戦中に使用された化学剤は約30種類、総使用量は124,200トン、総死傷者数は120万人にのぼった。陣営別に見ると、使用量はドイツ側が66.4万トン、連合軍側が57.8万トンとほぼ拮抗している。しかし、死傷者はドイツ側が8万人であったのに対し、連合軍側は100万以上、とりわけロシア軍はそのうちの56万人を占めている。これはドイツ側が予め報復使用に備えていたのに対し、連合軍側、とりわけロシア軍は防護装備はろくになく、将兵の化学兵器に対する理解も低かったためである。

第二次世界大戦の頃には各国は更に進歩した化学兵器を持っていたが、実戦使用した場合、相手が報復で使用すると甚大な被害が出るため、どこの国も使用できなかった(日本は予めアメリカから使用した場合は報復使用すると警告されていた)。しかし、枢軸国側では、報復の可能性のない相手(ドイツ:ユダヤ人、イタリア:エチオピア人、日本:中国人)に対して使用していた。また、ドイツや日本ではその相手に対する人体実験によって、かなりのノウハウを持っており、戦後日本の731部隊関係者がおとがめ無しだったのは、高まるソ連の脅威に対抗するために、彼らの持つノウハウを交換に得るためだったと言われている。

現在では化学兵器禁止条約(CWC)によって使用はおろか製造・保有も認められていないが、「貧者の核兵器」として手軽に開発・製造できる大量破壊兵器であるため、開発・製造する国が後を絶たず、報復の心配がない場合には使用もされている(イラン・イラク戦争においてクルド人に対してイラクが使用)。また、近年では大規模なテロ組織であれば化学兵器を製造能力を有しているところもあり、現に日本でオウム真理教(現「アレフ」)によってサリンが使用され、松本サリン事件や地下鉄サリン事件が引き起こされている。

厄介なのはある程度の化学生産能力を有していればその気になれば、簡単に製造でき、設備も農薬プラントなどから転換できることである。またそのため、化学兵器工場を農薬プラント(オウム心理教)やビール工場(イラク)などと偽る事も造作の無いことなのである。

化学兵器として使用される主な毒ガスはのタイプには皮膚や呼吸器を破壊する「糜爛(びらん)性ガス」、神経伝達を阻害する「神経ガス」、血中酸素の低下やガス交換を阻害する「血液ガス」などがある。また、具体的な成分での例では、マスタード(イベリット)、サリン、VX、シアン化水素(青酸)、アダムサイトなどがある。ちなみに、覚醒剤のLSDは元来は無能力剤という化学兵器であった。警察が使う暴徒鎮圧用の催涙ガスも一応化学兵器である。

コラム(毒ガスの内訳)
神経性ガス…サリン, タブン, ソマン
糜爛性ガスマスタードガス(イペリット), ルイサイト
窒息性ガス塩素ガス, ホスゲン
嘔吐性ガス…アダムサイト, ジフェニルクロルアルシン
催涙性ガス…クロルアセトフェノン, ブロムベンジルシアニド, 
            クロルベンジルマロノニトリル
血  液  毒…青酸, クロルシアン