艦上で離発艦する固定翼機。陸上機や水上機に対して言う言葉。よく「艦載機」と混用されるが本来は別の意味の言葉である。
艦上機には、まずカタパルトを使用しての発艦に耐えれるだけの強力な機体構造が必要である。現在のカタパルトでは100m足らずの間に時速数百kmにまで加速させられるのである。日本海軍の空母にカタパルトが搭載されなかったのは、それが開発できなかったという以外に搭載機がその射出に耐えれるだけの機体強度を持っていなかったからという話もある。
次に着艦時にも「制御された墜落」と形容されるように、高い負荷がかかる。100m程度だけ飛行甲板を走って停止させねばならない。数百mから2,000m以上も滑走できる陸上機とは負荷が桁違いであることは言わずもがなである。特に脚には負荷が集中するため、陸上機の3倍以上の強度が必要であると言われている。
また、狭い空母の飛行甲板や格納庫をより有効に利用できるように、固定翼機では主翼の先が折り畳める様になっていたり、機体によっては機首や尾翼、尾部なども折り畳めるようになっているものもある。艦上機ではないが、艦載ヘリコプターもメイン・ローターのブレードは後方に回して束ね、尾部は折り畳めるような構造になっているものが多い。この様な構造はそれだけ折り畳み部の強度を強化せねばならず、重量の増加に繋がる。また、海上で使用するためあらゆる部品や塗装は塩害対策をとっておかねばならない。これも重量の増加の一因となる。なお、日本海軍の空母の搭載機数がアメリカ空母に比べて少なかったのは折り畳み出来る艦上機が少なかった(零戦も21型が主翼の先僅か数十cmを折り畳めたに過ぎない)ことや塩害対策が十分でなく、飛行甲板上に長期に渡って係止出来ない、つまり甲板係止分を搭載機数に計上できなかったからである。
機体そのもの以外にも気をつけねばならない点がある。艦上機は当然のことながら洋上飛行が前提となる。そのため、トラブルが発生した場合、発艦した母艦以外に緊急に着艦出来るような艦または飛行場がある可能性は低く、また墜落した場合、乗員の助かる可能性は陸上機よりもはるかに低い。そのため、トラブルの原因となりやすいエンジンにも特別な配慮が必要である。レシプロ機の場合は、実用性の高い空冷エンジンが選ばれることが多く、ジェット機の場合には、1基がトラブルを起こしても飛行を続けれるように双発以上にすることが多い。
艦上機は水上機のようにフロートが付いているわけではなく、表面的には陸上機と何ら変わるところがない。しかし、上記のような各種制約があるため、陸上機の艦上機転用は成功した例がない。陸上機に着艦フックやランチバーといった艦上運用のための装備を追加しただけではそれは単に「艦上運用が可能」となっただけのことである。新たな装備が加われば重量バランスにも変化が生じるわけで、重量バランスの再設計を行ない、また上記のような各種制限に対応させていくと結局新規設計と同じになるので、転用機はどこかで妥協をせざるを得ないからである。しかし、逆に艦上機はより制限が厳しい中で開発されているため、艦上機として成功した機体の陸上機転用には成功例が多い。この代表例には零戦とF-4がある。