無色でオレンジに似た独特の臭気を持つ可燃性有毒ガス。青酸ともいう。毒物指定。
分子式HCN。構造式H-C≡N。分子量27.03。CAS番号74-90-8。ICSC番号0492。融点−13℃、沸点26℃。比重0.687(水=1)。
ABS樹脂やAS樹脂は、火災などで燃焼した時に大量のシアンガスが発生する。鉄錯体であるヘモグロビンの酸素が配位すべきところにシアノ基が配位してしまうことで、このシアン化水素を吸い込んでしまうと、臓器や脳に酸素が送られなくなり死亡する。火災で一酸化炭素中毒死と推される例のうちの幾らかは、実際はシアン中毒による死亡である可能性もある。
シアンは、ミトコンドリアのチトクロームに障礙を与え、電子伝達系を阻害する。そのため細胞内呼吸が阻害され、即ち全組織が障礙を受け致死的なダメージとなる。
青酸は古くから自殺や暗殺の毒薬として使われて来たが、メッキ工場や倉庫の燻蒸、ある種の有機合成化学などにも用いられているため、産業事故としても起こり得る中毒である。シアン中毒は速効性で致死的であるが、解毒薬も整っているため心停止さえしなければ蘇生できる可能性が高い。
シアン中毒が疑われた場合は、毒物の遺残物や嘔吐物に水で濡らした古い10円玉を接触させると奇麗になるので簡易検出法として有効である。
中毒の治療には亜硝酸アミル、亜硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどが使われ、希釈した溶液を静脈注射する。
古くなった青酸塩で殺害しようとしても、KCN+CO2+H2O→KHCO3+HCNで劣化反応が起き、効き目が薄まる。青酸中毒患者が助かる原因の多くはこの劣化反応だとされる。