夜尿症

読み:やにょうしょう
外語:nocturnal enuresis , 尿床症 支那語(大陸・台湾) , enurez/o エスペラント
品詞:名詞,@生理現象

おねしょ(寝小便)の病的な状態。医学的定義としては、5歳を過ぎてもおねしょが多い場合をいう。

病因

本来なら成長に応じてホルモンが働くようになり、自然におねしょは癒る。一般には3歳程度から排泄の制御が可能になるとされる。

しかし学童期になっても続くおねしょは夜尿症と呼ばれ、病気として扱われる。

様々な原因が考えられているが、これ、という明確な原因は必ずしも明らかではない。複数の要因によることもある。概ね、次のようなことにより起こると言われる。

夜間尿量が少ない場合は膀胱容量、多い場合はホルモン不足が疑われる。

きょうだいが出来た途端にぶり返す場合はストレスが原因である可能性が高い。

頻尿をおこす糖尿病や、尿が大量に作られる尿崩症などの病気もあるが、子供の場合の率は低い。

分類

この夜尿症のうち、赤ん坊の頃から引き続くものを一次性夜尿症、一度は癒った後(ある定義では6ヶ月以上、おねしょ無し)に再発したものを二次性夜尿症という。

検査

夜尿症の検査は次のようなことを行ない、結果から原因を判断して治療を開始する。

血液検査
血液中のミネラルバランス等を検査し、腎臓機能を調べる。
尿検査
朝一番の尿と、昼間の尿の、濃さ・重さを比較し、ホルモン機能を調べる。ホルモンが働いていれば、朝の尿は濃く、重い。
腹部超音波検査
エコー検査で腎臓、尿路に異状が無いかを調べる。また膀胱の膨らみ具合なども調べる。
膀胱容量検査
尿を限界まで我慢してから、何ml出るかを測定する。

朝一の尿は自宅で摂り病院に持って行くことになる。

膀胱容量検査も、通常は自宅で行なう。尿意に震える様を見るのは家族だけで充分だろう。しかし病院によっては、膀胱内圧測定などを始めたりするらしい。確かに、この方が正確に検査可能ではあるが、本人は恥ずかしいに違いない。

治療

そのうち癒るだろうと楽観的に考えていても、小学校の中学年程度でもなお夜尿症である場合、高校まで引きずる人が1割程度いるとされる。

治療は小児科泌尿器科の扱いであり、背後に病気がある場合は専門医の診察が必要である。但し、多くの場合、病院に行ったから早く治るという訳でもない。

小学5年生あたりから宿泊学習が始まるため4年生くらいになって病院に駆け込んで来る親子も多いが、即効性の治療は存在しないので治療は長丁場である。どうせ病院に行くなら早いほうが良い。

治療のためには「決して叱らず、睡眠中に起こさない」が必要とされる。

怒ることはそもそも無駄。誰も好き好んでおねしょをしているわけではない。夜尿症はいびきと同じで、自分の意思では止めることができないのである。

原則として起こさない

起こさない

むやみに睡眠中に起こすと睡眠リズムが崩れ抗利尿ホルモンが減ってしまう上、膀胱容量が一向に増えない。ホルモンの正常な分泌を促し、膀胱容量も必要規模に増やすため、夜中には原則として起こしてはならない。

但し、おねしょをしてしまった後、あるいは出ている最中に気付いた場合は、その限りではない。必要なら起こしてトイレに行かせ、着替えさせてよい。

起こさない理由

子供が自分で尿意に気付いて目覚めてトイレに行くのではなく、尿意に気付かず熟睡してる子供を親が起こしてトイレに行かせても、それはおねしょをする場所が布団の中からトイレの中に移行しただけで、何の改善にもならない。

それどころか、夜起こしてトイレに行かせることで一見おねしょをしていないように見えながらその実「親が毎晩のように睡眠中におしっこする癖」を定着させているとも言えるのである。

癖になってしまうと、もはや薬では癒せない。

方針

従って、夜間の水分と塩分の摂取を控え、睡眠前には排尿させ、必要ならおむつを当てて朝まで熟睡させる(自ら起きた場合は除く)。

おむつを嫌がる場合、必ずしも毎日ではない場合は「防水シーツ」が便利である。原因が精神的なものの場合、この安心感によって治療が早まる可能性もある。

また、おねしょアラーム(夜尿アラーム)を使用した夜尿アラーム療法(条件付け訓練法)もある。

訓練

治療のための訓練として、排尿中に一旦止める中断訓練で神経系の働きを高め筋力を鍛えたり、明らかに膀胱容量不足が疑われる場合は尿を我慢し膀胱容量を増やす排尿抑制訓練を行なう。

但し、尿が腎臓側へ逆流する疾病を患っている子供には、これはむしろ有害であるので、行なう前に医師に相談するべきである。

また、おねしょアラーム(夜尿アラーム)を使用した条件付け訓練法というものもあり、欧米で効果を上げている。

排尿抑制訓練

排尿抑制訓練とは、帰宅後や休みの日など時間がある時に、尿意を感じてもぎりぎりまで我慢するだけの単純な訓練である。これにより、徐々に膀胱に貯める力を養う。そして我慢後の尿量は毎回必ず計量し記録する。

6〜7歳で150ml、8〜9歳で200ml、10歳以降で250ml以上を溜められるようにするのを目標とする。

夜尿アラーム療法

おねしょアラーム(夜尿アラーム)と呼ばれる装置を使い、おねしょをしたところで子供を起こす、条件反射訓練をするものである。

多尿による夜尿症への効果は確認されていないが、原因不明の難治性夜尿症には劇的な効果があるとされる。装置は医療機関から購入可能で、日本では8歳以上が適用となっている。

実施方法

具体的には、パンツにセンサーを取りつけて寝る。おしっこをするとパンツが濡れ、センサーが水分を検知する。ここでアラームが鳴り、子供を起こす。

但し実際には、子供は眠りが深いのでアラーム程度では起きない。親が体を揺すったりして起こしてトイレに行かせ、おしっこが残っていれば完全に排尿させたのち着替えさせてまた寝かせる、という事を毎晩のように繰り返す必要がある。

効果

早ければ2〜3週間、通常は最低でも3ヶ月は続ける必要があり、根気と忍耐が必要な療法である。

続けているうちに、次のような効果が見られるとされる。

  • 尿意を感じて自分で起きられるようになる
  • 膀胱容量が増え、溜められる尿量が増え、おねしょをしなくなる

出る前に起こしてしまうのは良くないと昔から言われてきたが、出た後は起こしても問題はないらしく、むしろ効果的であることが分かってきている。

薬物療法

夜尿症に対して薬剤を用いる場合は、他の生活指導を充分に行なえることを前提とする。

そもそも「夜尿症に効く薬剤」は存在せず、一時的に症状が改善されても治癒することはない。

使われる薬剤はいずれも対処療法であり、生活指導の効果を高め夜尿症の根本原因を改善し、もって治療に役立てることを目的に使われる。上述の訓練と併用すると効果的である。

使われる薬剤には、抗利尿ホルモン剤、三環系抗鬱薬、交感神経刺激剤、副交感神経遮断剤などがあり、いずれも一長一短がある。

抗利尿ホルモン剤

抗利尿ホルモン剤は低比重多尿型の夜尿症に使い、尿量を減少させることを目的とする。但し服用してから多量の水分を摂ると体内の水分が多くなりすぎる水中毒となるため、投与前から水分制限をせねばならない。

代表的な医薬品は次のとおり。

三環系抗鬱薬

三環系抗鬱薬は本来は鬱病の薬だが、この副作用である抗コリン作用を主作用として用いる。副作用に悪心や倦怠感などがある。

服用者の半数に効果があるが、服用をやめると半数が再発すると言われている。

代表的な医薬品は次のとおり。

交感神経刺激剤

交感神経刺激剤は交感神経を刺激し外尿道括約筋の緊張を高め、尿をより多く我慢できるようにし、もって膀胱容量を増加させることを目的とする。手足の痺れや動悸などの副作用が見られる。

代表的な医薬品は次のとおり。

  • スピロペント(塩酸クレンブテロール)

副交感神経遮断剤

副交感神経遮断剤は副交感神経の機能を抑え、もって膀胱容量を増やすことを目的とする。

代表的な医薬品は次のとおり。