性の自己認識(Gender Identity)と肉体的な性別(Sex)が一致せず、そのために苦痛を感じ社会生活が困難になってしまう症状。正字では「性同一性障礙」だが、病名としては「性同一性障害」である。
生物学的には完全に正常だが、人格的に自分が別の性に所属していると確信し、日常生活にでも別の性の役割を果たそうとし、変性願望や性転換願望を持つ。
つまり、「身体の性と心の性の不一致を強く感じる」状態のことである。
この診断には「反対の性に対する強く持続的な同一感」と、「自分の性への持続的不快感、又はその性の役割についての不適切感」の二つの要素があることが条件となっている。
いわゆる「異性装趣味」や「同性愛」などとは異なるものだとされている。
性自認は深層心理に根差したもので、脳の性差によるものとする説が有力である。そして、一度形成された性自認を、あとから洗脳などを除く正当な治療法(精神療法や外科療法)で変えることはできない。
肉体的には男性でありながら、自身を女性と認識する場合をMtF(Male to Female)といい、肉体的には女性でありながら、自身を男性と認識する場合をFtM(Female to Male)という。
アメリカでの調査では、MtFは約1万人に1人、FtMは約3〜4万人に1人の割合で存在しているとされる。
現時点では、治療法は無い。
心を変えることは不可能なので、せめて体を、ということで、性転換手術をすることは可能である。
但し現在の医療では、男性の体を本当の女性の体にしたり、その逆をしたりすることは不可能である。例えば、男性の体から、子供を産める女性の体にすることは現在の医療では不可能であるし、同様に女性の体にペニスらしきものを付けることは可能でも、精液まで作れる男性の体にすることは不可能なのである。
あくまで、姿形を似せるという美容整形の延長線に過ぎないものであるが、それで本人が満足できるのであれば、「外科療法としては」成功と言える。
例えば、男性の体を女性の体に性転換する場合、次のような外科手術が行なわれる。
加えて、内科療法としてホルモン剤などが使われる。
しかし一度手術しても、それが容易に一生維持されるわけではない。性器や尿路の変更は身体にとっても重大なリスクであり、尿路感染症、尿道狭窄などの症状は頻発する。
加えて「手術で付けたもの」は体にとっては「傷」であり、体はそれを治そうとするため、その維持にも手間が掛かる。例えば人工的に作った膣は自然に塞がろうとするので、棒を入れて広げるダイレーションという作業が必要である。
また逆に女性を男性に性転換する場合、子宮・卵巣の摘出などすることになるが、これは相当な大規模手術となる。その際に神経を損傷し、排尿が出来なくなる障礙(障害)を負う事例もある。この場合は、自己導尿などが必要となる。
日本では1998(平成10)年10月に、医療行為として認められた国内初の性転換手術が始まった。
しかし生物学的な性が変わるわけではない以上、戸籍上の性別表記の訂正は認めらなかった。民法など他の法律や相続問題、そうでなくても現に体(遺伝子含む)が男なのに戸籍が女となっては社会が混乱するので、ある意味当然のことであった。