銀灰色の半金属元素。有毒な化合物が多く、昔から毒殺に使われていた。
「砒」の字が常用漢字から漏れたため、現在は「ヒ素」とも書く。化合物の日本語名は日本化学会の化合物命名法委員会によるものが正式だが、そこでは前述の理由により「ヒ素」となっている。
安定同位体は一つのみ。
| 同位体 | 天然存在比 | 半減期 | 崩壊の種類 | 崩壊後生成物 |
|---|---|---|---|---|
| 71As | ‐ | 2.72日 | EC崩壊 | 71Ge |
| β+崩壊 | 71Ge | |||
| 72As | ‐ | 1.08日 | β+崩壊 | 72Ge |
| EC崩壊 | 72Ge | |||
| 73As | ‐ | 80.3日 | EC崩壊 | 73Ge |
| 74As | ‐ | 17.77日 | EC崩壊 | 74Ge |
| β−崩壊 | 74Se | |||
| β+崩壊 | 74Ge | |||
| 75As | 100.00% | 安定核種(中性子数42) | ||
| 76As | ‐ | 1.0778日 | β−崩壊 | 76Se |
| 77As | ‐ | 1.62日 | β−崩壊 | 77Se |
| 78As | ‐ | 1.51時 | β−崩壊 | 78Se |
海水中に微量に含まれていて、ある種の海藻はそれをより毒性の低い有機物の形で蓄積する。
しかし、例えばヒジキは砒素を無機体で高濃度(乾重量1gあたり40〜50μg程度)含んでいるにも関わらず、ヒジキを食べたことによる砒素中毒が発生した例はない。また、砒素は髪や爪に蓄積されるが、ヒジキを良く食べる人の髪から砒素が特に高濃度に検出されることもないため、ヒジキ中の砒素が吸収されない、何らかのメカニズムがあるのだろう。
なお、砒素を多く含むという理由で、イギリスやカナダではヒジキの輸入禁止措置がとられている。
日本での砒素化合物中毒事件として有名なものに、次のような事件がある。
日本では殆ど見られないが、世界的には水道水の砒素による汚染はよく見られる。JEFCAによるPTWI(一週間に摂取して問題ないと考えられる予備的な値)は15μg/kgである。
大昔より存在が知られており、発見者は明らかでない。
化学名Arsenicumの語源は諸説ある。ラテン語で砒素を意味するarsenicum、ギリシャ語で雄黄(黄色の顔料)を意味するαρσενικόν(arsenikón)、アラビア語で良い色を意味するزرنيخ(zarnīkh)などから名付けられたと言われている。