ポリ塩化ビフェニル、ポリ塩素化ビフェニル。塗料、絶縁油、熱媒体、潤滑油等として用いられる。不燃性・絶縁性・化学的安定性などに優れ、水には溶けず油とよく混ざり有機溶媒にはよく溶け、粘着性に優れるといった、産業用途に適した特性を多く持っている。
常温常圧下では無色透明から薄黄色の粘り気のある油状液体。性質は構造によって違うが、全てをまとめたCAS番号は1336-36-3である。ICSC番号は0939だが、これはAroclor 1254(アロクロール1254)だけが対象のようである。
化学的に安定なPCBは自然界では分解されにくいため、環境に残留してしまう環境汚染物質である。そしてPCBは生物にとって厄介な物質だった。例えば人間で考えると、摂取された物質を分解するのは肝臓の役目であるが、さすがの肝臓もPCBは分解できない。近年ではPCBを分解するバクテリアも発見されているが、それ以外の殆どの生物にとって、PCBは分解できない代物なのである。
加えて問題なのは、水に溶けずに油に溶けるという特徴である。このため海洋に流れたPCBは海で希釈されることなく、PCB油滴は魚介類の体脂肪へと集まり、生態系によって生態濃縮が行なわれた。小動物の捕食によって高濃度のPCBが大型魚や、それを捕食する鳥に集まり、そしてそれらが大量に死ぬという問題が1960(昭和35)年代になって発生したのである。人間の場合でも、水に溶けないので腎臓から尿として体外に排出できず、結果体脂肪組織へと蓄積されてゆくと考えられる。但しダイオキシンと同様、PCBも無限に蓄積するのではなく、ある程度の半減期はあると考えられる。
PCBの慢性毒性については現在も研究中であるが、経口摂取、吸入、皮膚接触で毒性を示すとされ、ヒトに対しては、変異原性や発がん性、免疫力や繁殖力の低下、肝臓や腎臓への毒性などが疑われているようである。
日本では食用油である米糠油にPCBが混入した「カネミ油症事件」と呼ばれる食品公害事件が有名である。
PCBは800℃程度に加熱すると構造がよく似ているが毒性がより高いと言われているダイオキシンとなる。1100℃程度にすると分解される。
具体的にPCBとは、基本骨格であるビフェニルの全10個の水素のうち、1〜10個が塩素に置換したものをいう。このためPCBには全部で10種類の同族体が存在する。
塩素数1は略号M1CB。分子式C12H9Cl。分子量188。異性体数3。
塩素数2は略号D2CB。分子式C12H8Cl2。分子量222。異性体数12。
塩素数3は略号T3CB。分子式C12H7Cl3。分子量256。異性体数24。
塩素数4は略号T4CB。分子式C12H6Cl4。分子量290。異性体数42。
塩素数5は略号P5CB。分子式C12H5Cl5。分子量324。異性体数46。
塩素数6は略号H6CB。分子式C12H4Cl6。分子量358。異性体数42。
塩素数7は略号H7CB。分子式C12H3Cl7。分子量392。異性体数24。
塩素数8は略号O8CB。分子式C12H2Cl8。分子量426。異性体数12。
塩素数9は略号N9CB。分子式C12HCl9。分子量460。異性体数3。
塩素数10は略号D10CB。分子式C12Cl10。分子量494。異性体数1。
締めて異性体数の合計は209である。
塩素数1のうち、2番炭素が置換したものはCAS番号2051-60-7、3番炭素が置換したものはCAS番号2051-61-8、4番炭素が置換したものはCAS番号2051-62-9である。
塩素数10はCAS番号2051-24-3である。
2,2',3,3',4,4',5,5',6,6'-Dacachlorobiphenyl
また潤滑油の商品、つまり混合物としても多数CAS番号は登録され、Aroclor 1016は12674-11-2、Aroclor 1221は11104-28-2、Aroclor 1232は11141-16-5、Aroclor 1242は53469-21-9、Aroclor 1248は12672-29-6、Aroclor 1254は11097-69-1、Aroclor 1260は11096-82-5、などがある。