H-IIBロケット
読み:エイチトゥービー-ロケット
外語:H-IIB Rocket

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)により開発された衛星打ち上げ用ロケット。2009(平成21)年9月11日に試験機の打ち上げに成功し、2020(令和2)年5月21日に最終機が打ち上げられた。
目次

概要

仕様

主要諸元

最大打ち上げ能力

構成
 二段式液体燃料ロケットで、基礎はH-IIAロケットである。
第一段ロケットLE-7A×2
固体補助ロケットSSB
液体ロケットブースター不明
固体ロケットブースターSRB-A3
第二段ロケットLE-5B-2

名称の由来
 名前の「H」は、液体燃料の水素(H)から取られている。
 当初「H-IIAロケット増強型」として計画されていたものだが、一般人でも区別し覚えやすいようにとの配慮から、「H-IIBロケット」へと名称が変更されることとなった。

特徴

開発
 HTVという非常に質量のある物資を打ち上げる能力を獲得するため、JAXAと三菱重工業が約270億円かけて共同開発したロケットである。
 一基あたりの打ち上げ費用は、試験機で147億円とされた。
 H-IIAロケットの約2倍の性能を持ち、H-IIAロケットを二回打ち上げるより割安となる。

費用
 ロケットの打ち上げ費用は非公表であるが、実際には約150億円程度とされている。
 H-IIBロケットで打ち上げる「こうのとり」の機体開発費は約140億円程度とされている。

第一段ロケットクラスター化
 H-IIAロケットと比較し、H-IIAロケットでは1基だった第一段液体ロケットエンジンLE-7Aを2基に増設したクラスター構成とする。これに伴い、直径は1.2m太い5.2mとなり、全長は1m伸長する。そして推進薬を約1.7倍搭載する。
 そして、SRB-A(固体ロケットブースター)は、改良型のSRB-A3として4本が取り付けられる。
 タンクのドーム部が再び国産化された。また、接合は溶接ではなく、FSWを採用した。
 なお、エンジンのクラスター化(今回は一段目のエンジンを二基に)は、我が国では初めてである。

第二段ロケット
 ロケットエンジンLE-5B改良型(LE-5B-2)を搭載するのが第二段ロケットで、これはH-IIAロケットと同じである。
 基本的には同じだが、重いHTVを搭載するため、強度を上げるための変更が行なわれている。

固体ロケットブースター
 固体ロケットブースターには、SRB-AシリーズのSRB-A3が使われる。
 H-IIAロケットでは、7号機以降はSRB-A改良型が使用されているが、これは暫定的な改良であったとされる。SRB-A3ではノズルの設計変更など抜本的な改良が施され、問題となった局所エロージョンが発生しないようになったとされる。
 H-IIBロケットの試験機で問題がなければ、以降はH-IIAロケットでも使用されるとしている。

能力
 打ち上げ能力はH-IIAロケットの4〜6トンから、静止トランスファ軌道(GTO)で最大で8トンまで増強される。4トン級の衛星なら二機同時に打ち上げ可能だが、ロケット二発よりは安価となり、つまり一機あたりの実質コストが下がることになる。
 H-IIAロケットのH-IIA204の第一段強化型といえる。

補足

ペイロード(荷物)
 こうのとりを打ち上げる時にはこうのとり専用のフェアリングが使われるが、それ以外の場合は、従来のH-IIAロケット用のものとほぼ同一仕様のものが使えるとされている。
 同一のものが使えることで、これまで培ってきた信頼性の維持が実現され、また同じものをH-IIA/H-IIBの双方で用いて回数を重ねることは信頼性の向上に繋がるとともに、開発のリスクおよびコストの削減にも繋がる。

発射設備
 発射設備は、従来のH-IIAロケットと共有である。
 種子島宇宙センター大型ロケット発射場から打ち上げられる。

実績と計画

成功率
 全9機の打ち上げ全て成功しており、成功率は100%である。

計画
 最初のHTV/H-IIBロケット試験機は名前の通り、完全な試験機で、宇宙ステーション補給機こうのとりの技術実証機(こうのとり1号機)が打ち上げらげた。ISSまで、水や食料を運搬することを実証試験とし、無事に成功させた。
 2号機以降が本番となる。こうのとりの運用機のほか、情報収集衛星を打ち上げる予定もあるとされる。こうのとりにはCubeSatと呼ばれる箱型の小型衛星が6個程度まで搭載可能で、ピギーバック衛星として打ち上げることが可能。
 一応はISSに依存したHTV用ということになっているが、JAXAとしては、将来の有人飛行も念頭に入っているものと思われる。

打ち上げ済みH-IIB

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