Μ-Ⅴロケット

読み:ミューファイヴ・ロケット
読み:エムごー・ロケット
外語:M-V rocket 英語
品詞:固有名詞

宇宙科学研究所(ISAS)(現在のJAXA)により開発された、科学衛星打ち上げ用のロケット。ミューロケットの第五世代。

目次

仕様

三段式固体燃料ロケットだが、オプションとして四段目にキック・モータを装備することも可能である。

第4世代のミューロケットΜ-3SⅡ型の後継機として開発された。

衛星打ち上げごとにカスタマイズされており、共通仕様というものが存在しないようだが、直径は2.5mで、低軌道へ1.8トンのペイロードを運ぶことができる。

1997(平成9)年2月12日に1号機(Μ-Ⅴ-1)の打ち上げに成功し、全7機を打ち上げた。

名称の由来

名前の「Μ」(ミュー)は、ラムダロケットの後継であるところから。

「Ⅴ」(5)は、ミューロケットの第5世代であるところから。

但し関係者は「エムごーロケット」と呼んでいる。Mがミューであることに対する強い思い入れはないらしい。

固体燃料ロケット

日本では、二種類のロケット開発が並行した。このうちΜ-Ⅴロケットは、固体燃料ロケットである。

液体燃料ロケットに比較して固体燃料ロケットは、構造が簡単なので取り扱いが容易だが、誘導制御が難しく精密な軌道投入などには向いていない、という利点と欠点がある。

軌道がずれると困る実用衛星の打ち上げには不向きだが、さほど軌道が正確でなくとも使える科学衛星では支障がないことが多い。

かくして日本ではISASが固体燃料ロケットの開発を続け、様々な実績を残した。またH-ⅡAロケット用の固体ロケットブースターSRB-Aシリーズの改良にも、ISASの開発した技術が導入されている。

風貌

全体的に白系で塗られており、下半分は灰色系で塗られる。

下半分には、赤色の縦書きで「Μ-Ⅴ-8」のようにロケットの名前が書かれているのが特徴だった。

廃止

Μ-Ⅴロケットは優れたロケットで、固体燃料ロケットなのでミサイルとしての軍事転用も不可能ではないなど魅力あるものだった。

しかし最大の弱点として、「高い」というものがあった。

約75億円で、低軌道(LEO)へ1.8トン程度のペイロードしか運ぶことができない。対するH-ⅡAロケットの最もコンパクトなモデルH-ⅡA202でさえ、約90億円でLEOへ10トン程度運ぶことができるので、その差は歴然としていた。

かくして、廃止という憂き目に遭った。

実績

全7回中、6回成功している。成功率86%である。

  1. Μ-Ⅴロケット1号機(Μ-Ⅴ-1): 1997(平成9)年2月12日13:50(@243) はるか(MUSES-B)
  2. Μ-Ⅴロケット3号機(Μ-Ⅴ-3): 1998(平成10)年7月4日03:12(3日@800) のぞみ(PLANET-B)
  3. Μ-Ⅴロケット4号機(Μ-Ⅴ-4): 2000(平成12)年2月10日10:30(@104) ASTRO-E (失敗)
  4. Μ-Ⅴロケット5号機(Μ-Ⅴ-5): 2003(平成15)年5月9日13:29:25(@228) はやぶさ(MUSES-C)
  5. Μ-Ⅴロケット6号機(Μ-Ⅴ-6): 2005(平成17)年7月10日12:30(@187) すざく(ASTRO-EⅡ)
  6. Μ-Ⅴロケット8号機(Μ-Ⅴ-8): 2006(平成18)年2月22日06:28(21日@936) あかり(ASTRO-F)
  7. Μ-Ⅴロケット7号機(Μ-Ⅴ-7): 2006(平成18)年9月23日06:36(22日@941) ひので(SOLAR-B)

計画

当初の計画では、Μ-Ⅴ-2が月探査機LUNAR-A、更に後には金星探査機あかつき(PLANET-C)の打ち上げにも使われる予定だった。

このため実際の打ち上げ順序とロケットの号機番号が一致せず、またJAXAとなった後のロケット計画見直しなどもあり、Μ-Ⅴ-7の打ち上げを最後に開発が中止されることになった。

廃止された計画は次の通り。

  • Μ-Ⅴロケット2号機 ‐ 月探査機LUNAR-A (衛星の開発遅延により計画中止)
  • Μ-Ⅴロケット9号機 ‐ 金星探査機PLANET-C (Μ-Ⅴロケット中止によりH-ⅡAロケットに変更)

後継となる固体燃料ロケットとして、イプシロンロケットが開発された。

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