硫化水素

読み:りゅうかすいそ
外語:Hydrogen sulfide 英語
品詞:名詞

火山ガスや鉱泉などに含有する成分。毒性が強い。

目次

基本情報

  • 分子式: H2S
  • 分子量: 34.08
  • 相対蒸気密度: 1.19 (空気=1)
  • 融点: −85.5℃
  • 沸点: −60.3℃
  • CAS番号: 7783-06-4
  • ICSC番号: 0165
  • 外観: 無色の気体で、特徴的な臭いがある
  • 溶解性:
    • に可溶 (0.5g/100ml(20℃)、水溶液は弱い酸性を示す)

誘導体、関連物質の例

発生

火山などの他には、屎尿処理場、下水処理施設、廃棄物最終処分場などで発生する。

実験室では硫化鉄(FeS)に塩酸(HCl)を加えて発生させる(FeS+2HCl→FeCl2+H2S↑)。

この物質は空気より重い気体なので、低いところに溜まりやすい。

火山に近い温泉に見られる硫黄泉などでは温泉水中に硫化水素が見られ、これが乳白色の温泉の原因となる。このように自然でも簡単に発生してしまう単純な構造の物質であるが、毒性が強いことから注意が必要である。

反応

可燃性で、空気中では青色の炎を上げて燃え、二酸化硫黄になる。

液体の硫化水素は有機化合物の溶媒として使われ、有機合成では還元剤として頻用される。

硫黄を含む有機物が腐敗・分解された時に発生する。実験室での製法は硫化鉄に硫酸を加える(弱酸の遊離反応)。

特定悪臭物質に認定されており、「腐った卵臭」があるとしている。

日本では、2008(平成20)年3月頃から硫化水素による自殺が毎日のように発生し、社会問題となった。テレビや新聞などのマスコミが連日報道するため、この自殺方法を知った者が次々と後に続いているようである。自殺幇助の罪と考えられるため、日本のマスコミは一度裁かれる必要があるだろう。

中毒作用

有毒。吸入すると、肺水腫を起こすことがある。

中枢神経系に影響を与える。高濃度では、中枢抑制、呼吸抑制を起こし、窒息、意識喪失、最悪の場合で死に至る。

ヘモグロビンに影響が及ぶと全身に酸素を送ることができなくなり、結果として窒息と同様の症状を示す。

低濃度では臭気があるが、高濃度では嗅覚が麻痺し臭いを感じなくなるので注意が必要である。

濃度ごとの特徴

濃度ごとの特徴は次の通り(薄→濃、1000ppm=0.1%)。

濃度特徴資料
0.00041ppm嗅覚閾値嗅覚測定法安全管理マニュアル
0.02〜0.2大気中濃度の規制基準悪臭防止法施行規則 別表第一
10立入禁止濃度労働安全衛生規則 第五百八十五条
1000〜即死MSDSでは800ppm(LC50、5分)

1000ppm以上では、一呼吸、長くても1分以内に意識を喪失するとされる。

実際に、温泉の駐車場脇の窪地で高濃度の硫化水素が発生し、一家全員が死亡するという、痛ましい事件も発生している。

なお、「即死」とはされているが、実際にすぐに死ぬわけではない。硫化水素の死因は実際的には窒息死であるので、ここから実際に死ぬまでには数分かかると思われる。

箱根大涌谷

かつて、箱根の大涌谷には「硫化水素感知判別表」なる看板が立てられていたとされている。

その内容から、「不謹慎だ」などの苦情を受ける等し、今では撤去されてしまったそうである。

注意

この附近は、火山ガス(有害ガス)の噴出地域

です。危険ですから 立ち止まったり、食事など

をしないよう充分注意してください。

硫化水素感知判別表

硫化水素濃度感知度避難基準
(ガスのこさ)からだにかんずるていどどうしたらよいか
15〜8PPM気持のわるいにおいがしますなるべく立ちどまったり
しないでください
280〜120〃においを強く感じますここからとおざかって
ください
3200〜300〃においは強くないが 、はな、のど、に
強いいたみを感じます
ここから「ただちに」
とおざかってください
4500〜700〃中毒をおこします覚悟してください
51000〜1500〃死亡しますあきらめてください

神奈川県箱根 公園管理事務所

神奈川県小田原保健所

この最後があまりにも画期的だったためVOWで紹介され、その影響で抗議が殺到。最後は撤去されることになったようだ。

実際、硫化水素は危険で、火山で発生した硫化水素で死亡した例には枚挙にいとまがない。中毒を起こす危険性があるが故に立てられた看板であり、「不謹慎」とされた表の下の方は客観的・科学的に正しい。とはいえ、「死ぬ」と書いてなければ死人は出ない、「絶対安全」と言えば手抜きでも事故は起こらないという言霊を信仰し科学を解さない人達が多い我が国ではこのような看板は許されないのであった。なお、硫化水素は火山の近くなど、自然界に多く存在し、人工的に作られた硫化水素と毒性は変わらない。

適用法令

  • 毒物及び劇物取締法: 該当しない
  • 消防法(危険物の規制に関する政令): 該当しない
  • 労働安全衛生法 (労働安全衛生法施行令)
    • 別表第三 特定化学物質 第二類物質
    • 別表第九 名称等を通知すべき危険物及び有害物
  • 航空法: 該当しない
  • 船舶安全法(危険物船舶運送及び貯蔵規則): 該当しない
  • 港則法: 該当しない
  • 海洋汚染防止法(海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律): 該当しない
  • 水質汚濁防止法: 該当しない
  • 大気汚染防止法: 該当しない
  • 悪臭防止法 (悪臭防止法施行令)
  • 化学物質排出把握管理促進法(PRTR法): 該当しない
  • 高圧ガス保安法 一般高圧ガス保安規則
    • 第二条 一 可燃性ガス
    • 第二条 二 毒性ガス

危険性

  • 引火点: 引火性ガス
  • 発火点: 260℃
  • 爆発限界: 4.3〜46vol%(空気中) (ICSC)

有害性

  • 刺激
    • 腐食性: (該当資料なし)
    • 刺激性: 眼、気道を刺激する
    • 感作性: (該当資料なし)
  • 毒性
    • 急性毒性:
      • ヒトLC50: 800ppm(5分) (MSDS)
      • ヒトLD99: 2000ppm(1分以内) (※根拠不詳)
    • 慢性毒性: (該当資料なし)
    • がん原性: (該当資料なし)
    • 変異原性: (該当資料なし)
    • 生殖毒性: (該当資料なし)
    • 催畸形性: (該当資料なし)
    • 神経毒性: (該当資料なし)
  • 規制値
    • 一日許容摂取量(ADI): (該当資料なし)
    • 暫定耐用一日摂取量(PTDI): (該当資料なし)
    • 急性参照値(ARfD): (該当資料なし)
    • 暴露許容濃度(TLV): 10ppm(TWA);15ppm(STEL) ただし1ppm(TWA);5ppm(STEL)への変更を提案中 (ACGIH 2004)
    • 最大許容作業濃度(MAK): 10ppm, 14mg/m³; Peak limitation category:Ⅱ(2); Pregnancy risk group:Ⅱc (DFG 2004)

環境影響

  • 分解性: (該当資料なし)
  • 蓄積性: (該当資料なし)
  • 魚毒性: 水生生物に対して毒性が非常に強い
関連するリンク
ICSC 国際化学物質安全性カード
関連する用語
特定悪臭物質
二酸化硫黄

コメントなどを投稿するフォームは、日本語対応時のみ表示されます


KisoDic通信用語の基礎知識検索システム WDIC Explorer Version 7.04a (27-May-2022)
Search System : Copyright © Mirai corporation
Dictionary : Copyright © WDIC Creators club