陽子‐陽子連鎖反応

読み:ようし・ようし・れんさはんのう
外語:proton–proton chain reaction 英語
品詞:名詞

恒星にて行なわれている核融合反応の一つ。「pp反応」とも。

目次

水素ヘリウムに変換する核融合反応の一種。

CNOサイクルとともに、恒星内における主要な核融合反応である。

ヘリウム3生成過程

反応の最初の段階として、二つの陽子(水素)から重水素を作る。

  • 1H + 1H → 2H + e+ + νe + 0.422MeV

最後の0.422MeVは、この時、ニュートリノが持ち去る最大のエネルギーを表わす(以下同様)。

この時生ずる陽電子はすぐに電子と対消滅するが、これは反応に直接影響しない。

  • e+ + e → 2γ + 1.02MeV

次にヘリウム3を作る。

  • 2H + 1H → 3He + γ + 5.493MeV

ヘリウム4生成過程

ヘリウム3からヘリウム4に至るには、3種類以上の経路が知られている。pp Ⅰが約9割、pp Ⅱが約1割で、pp Ⅲ以降がごくまれに発生する。

pp Ⅰ 分岐

温度が1,000万度を超え、1,400万度程度までの環境では、主としてこの分岐である。

  • 3He + 3He → 4He + 1H + 1H + 12.859MeV

pp Ⅱ 分岐

温度が1,400万度を超え、2,300万度程度までの環境では、主としてこの分岐である。

  • 3He + 4He → 7Be + γ
  • 7Be + e7Li + νe
  • 7Li + 1H → 4He + 4He

宇宙で、LiとBeの存在比率が小さいのは、この経路を通るケースが全体からみて少ないためである。

pp Ⅲ 分岐

温度が2,300万度を超える環境では、主としてこの分岐である。

  • 3He + 4He → 7Be + γ
  • 7Be + 1H → 8B + γ
  • 8B → 8Be + e+ + νe
  • 8Be → 4He + 4He

太陽の場合、中心核温度が高くないためこの分岐はあまり起こらない。しかし、硼素8がβ崩壊しベリリウム8になるときに発生するニュートリノのエネルギーが最大14.06MeVと大きいため、太陽ニュートリノ観測においては重要である。

pp Ⅳ (Hep)

ごく稀に、ヘリウム3陽子が直接融合してヘリウム4を生成することがある。

  • 3He + 1H → 4He + e+ + νe + 18.8MeV

ヘリウム(He)と陽子(p)の反応なのでHepというが、この反応は滅多に起こらない。しかし、発生するニュートリノのエネルギーが最大18.8MeVと非常に大きい。

生成エネルギー

この反応は、単純化すれば陽子4個からヘリウム4原子核1個を作る反応である。

両者を比較すると、ヘリウム4は、元々の陽子4個より質量が0.7%程度小さい。この質量分はエネルギーとして放出されており、エネルギーは、反応に応じてニュートリノとγ線で放出されている。

ニュートリノは他と反応しないため失われる一方であるが、γ線は陽子や電子などの物質に作用して加熱する働きをする。こうして太陽含め恒星は加熱し、この熱エネルギーによって恒星内の物質は運動エネルギーを獲得し、もって自己重力によって潰れたりすることなく、その形状を保ちつづけることができる。

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