H-ⅡAロケット

読み:エイチトゥーエイ・ロケット
読み:エイチにエイ・ロケット
外語:H-IIA Rocket 英語
品詞:固有名詞

宇宙開発事業団(NASDA)(現在のJAXA)により開発された、衛星打ち上げ用のロケット。

直径4m、全長53m、重量285トン。

目次

仕様

標準型(H2A202) 主要諸元

  • 外径: 4m(ロケット本体部)
  • 全長: 53m
  • 重量: 289トン
  • 誘導方式: 慣性誘導方式

最大打ち上げ能力

構成

二段式液体燃料ロケットで、1990年代末まで使われたH-Ⅱロケットの改良ロケットである。

設計上は次の構成がある/あった。

第一段ロケットLE-7A
固体補助ロケットSSB (※22号機まで対応、23機以降では廃止、後述)
液体ロケットブースターLRB (※実在しない、後述)
固体ロケットブースターSRB-A/SRB-A改良型/SRB-A3
第二段ロケットLE-5B/LE-5B-2

補助ロケットと液体/固体ロケットブースターは、標準型/増強型などのタイプにより組み合わせが異なる。

なお、固体補助ロケット(SSB)は打ち上げ業務が三菱重工に移管されて以降廃止されており、H-ⅡAロケット23号機以降では第一段ロケットにSSB取付部が存在しない。

LRBは開発が中止されたため、実在しない。

名称の由来

名前の「H」は、液体燃料の水素(H)から取られている。

H-ⅡAは公式には「エイチ・ツー・エイ」と読むが、NHK等では何故か「エイチ・に・エイ」と読まれている。

シーケンス

概ね、次の手順で進む。

  1. 第一段着火
  2. 固体ロケットブースター着火、発射
  3. 固体ロケットブースター燃料終了、分離
  4. 第一段燃料終了、第一段と第二段分離
  5. 第二段燃焼開始
  6. 第二段燃料終了
  7. 衛星分離

LE-5Aは「再着火」可能な高性能エンジンなので、第二段燃焼は一回目と二回目があり、その間は慣性飛行をして目的の軌道近くまで移動することになる。

第一段にはメインエンジン(LE-7A)の他に固体ロケットブースターSRB-Aが付く。かつては固体補助ロケット(SSB)も追加で使われていた。

第一段のメインエンジン(LE-7A)だけでは推力が自重以下なので、SRB-Aに点火しないと発射台から浮上しない。よってSRB-Aは地上で点火される。LE-7A着火後、約5秒後にSRB-Aに点火され、ロケットはリフトオフ(発射)となる。

対して、かつて使われていた固体補助ロケット(SSB)は空中で点火される。ゆえにSSBのみではロケット自体が発射できないため、SRB-Aが2本必要である。SSBはH-ⅡAロケット試験機2号機H-ⅡAロケット7号機で使用されたのみで、その後廃止された。

格段の特徴

H-ⅡAは、H-Ⅱから大きな仕様変更がなされている。

第一段ロケット

ロケットエンジンLE-7Aを搭載するのが第一段ロケットである。

H-Ⅱでは国産品で、LE-7Aと溶接されて組み立てられていたが、H-ⅡAではボーイング社製の成型品を採用した。

段間部

第一段と第二段の間は、段間部と呼ばれる。通常は、ここにミッションマークなどが描かれるが、情報収集衛星(IGS)の場合は何も描かれないらしい。

通常は黒だが、H-ⅡAロケット7号機H-ⅡAロケット21号機H-ⅡBロケット試験機では段間部は白く塗装されていた。

ロケットは飛行中、大気との摩擦で温度が上昇する。何色にしても温度上昇は変わらないが、地上で余計な加熱をしないよう、温度が上がりにくくするために白に塗装されることがあるという。白は、温度上昇の開始点を低くすることが目的となる。

第二段ロケット

ロケットエンジンLE-5Bを搭載するのが第二段ロケットである。

先代LE-5Aでは、蝋付溶接箇所が破断するという事故を起こしたため、今回はそのような箇所が極力減らされている。

またLE-5Aでは一体化されていた推進剤タンクは、液水と液酸で分離した。液水と液酸は温度が異なるが一体型であると薄い隔壁で熱が伝わり温度が変わってしまう問題があったためである。

採用されたものはアメリカのロケット、デルタⅢやデルタⅣと同じ物である。液水は国産、液酸はボーイング社製とされている。

その他

その他にも、様々な仕様変更がある。金属から繊維素材への変更による軽量化、価格の削減の努力などが行なわれている。

また、全体的な構造の簡素化や、組み立て、衛星搭載などの作業方法も効率的に改められた。

仕様差

H-ⅡAロケットは、様々なシーンに対応できるよう、打ち上げ能力が何段階か用意されている。これにはそれぞれ名前が付けられており、「ファミリー仕様(機体識別名称)」と呼ばれ、そのロケットの仕様を表わす。

例えば、H-ⅡA2024の場合、2=本体は二段式、0=LRB(液体ロケットブースター)0本、2=SRB-A(固体ロケットブースター)2本、4=SSB(固体補助ロケット)4本、という意味になる。

そして、SSBが無いときには該当する末尾の数字1桁は省略する。

ファミリー仕様一覧

H-ⅡAロケットに設定されているファミリー仕様(機体識別名称)は次のとおり。

名称搭載ブースター性能(単位:トン)
LRBSRB-ASSBSRB-A初期型SRB-A改良型SRB-A3
GSOGTOLEOGSOGTOLEOSSO2cvGSOGTOLEO
H-ⅡA2020204.12.53.81042.5
H-ⅡA20220224.5
H-ⅡA20240244.6
H-ⅡA2040405.8
H-ⅡA2121207.517
H-ⅡA2222209.523

なお現在、SSBを使用するH-ⅡA2022とH-ⅡA2024は廃止されており、ファミリー仕様から削除されている。

H-ⅡAロケット6号機の失敗以降採用されたSRB-A改良型は安全優先のためやや性能が落ちている。性能は、更なる改良型SRB-A3でほぼ回復したとされる。

212と222は構想はされたが、実現されなかった。212相当の性能を実現するものとしてH-ⅡBロケットが開発されている。

1993(平成5)年に検討が始まり、1996(平成8)年開発開始。当初は2000(平成12)年打ち上げを目標としたが、この年にH-Ⅱロケット打ち上げに失敗したため、対策を講じるために1年延期、その後試験中に第一段エンジンを壊してしまい更に半年延期された。

H-Ⅱは純国産であったが、H-ⅡAではコスト削減のために部品点数も減らし、かつ一部にアメリカ部品やドイツ部品が使われている。

完成した試験機1号機(H-ⅡA・F1)は2001(平成13)年8月29日種子島宇宙センター大型ロケット発射場より発射され無事に成功した。

試験機2号機(H-ⅡA・F2)は2002(平成14)年2月3日の打ち上げで、試験機2号機と1号機の違いは固体補助ロケット(SSB)が4本搭載されることである。

3号機からが遂に本番である。

打ち上げ日時

H-ⅡAロケットは、現時点では号機番号と打ち上げの順番が一致している。

実績について

沿革

2001(平成13)年に初めて打ち上げられた。2002(平成14)年は3回打ち上げられた。

2003(平成15)年は試練の年だった。情報収集衛星(IGS)を2セット打ち上げることになるが、H-ⅡAロケット5号機では成功したがH-ⅡAロケット6号機は失敗した。

2005(平成17)年にはH-ⅡAロケット7号機で、待望のMTSAT-1R(運輸多目的衛星新1号機)ことひまわり6号の打ち上に成功した。

2006(平成18)年には1月に陸域観測技術衛星だいちを、翌2月にはひまわり7号(運輸多目的衛星2号機)の打ち上げに続々と成功している。

高信頼ロケット

H-ⅡAロケットは、2023(令和5)年1月までに、計46回打ち上げられている。派生ロケットであるH-ⅡBロケットを含めれば計55回打ち上げられている。H-ⅡAロケットは初号機から連続5回の成功を記録し、6号機は失敗したものの、その後は40回連続の成功で記録更新中である。信頼性に関しては世界でも屈指の完成度に達したと考えられる。

まず、大型液体燃料ロケットに関して言えば、NASDA発足以来、まず連続29機成功を記録した。

初めて失敗したのは、30機目である。

  • H-Ⅱロケット 6・7機目が失敗、H-Ⅱシリーズ打ち切り
  • H-ⅡAロケット 1〜5機目まで成功、6機目が失敗、7〜46機目成功
  • H-ⅡBロケット 9機全機成功

合計86機中、83機成功、3機失敗、「成功率96.51%」。H-ⅡAロケットだけでも46機中45機成功で「成功率は97.83%」である。

その上、打ち上げに伴う死傷者も0名(但しH-ⅡのメインエンジンLE-7開発中の事故で1名殉職)。

これは、知られる限りでは、世界最高の記録である。

打ち上げの費用

公表されている範囲では次のとおりで、おおむね110億円程度である。全てロケット側コストのみであり、それ以外の費用は含んでいない。なお、近年では打ち上げ費用は非公開となっている。

打ち上げ済みH-ⅡA

2001(平成13)年

2003(平成15)年

2006(平成18)年

2007(平成19)年

2008(平成20)年

2009(平成21)年

2010(平成22)年

2011(平成23)年

2012(平成24)年

  • H-ⅡAロケット21号機 (202) しずく(第一期水循環変動観測衛星 GCOM-W1)、KOMPSAT-3(南鮮 多目的実用衛星3号機)

2013(平成25)年

2014(平成26)年

2015(平成27)年

2016(平成28)年

2017(平成29)年

2018(平成30)年

2020(令和2)年

2021(令和3)年

2023(令和5)年

  • H-ⅡAロケット46号機 (202) 情報収集衛星 レーダ7号機

コメントなどを投稿するフォームは、日本語対応時のみ表示されます


KisoDic通信用語の基礎知識検索システム WDIC Explorer Version 7.04a (27-May-2022)
Search System : Copyright © Mirai corporation
Dictionary : Copyright © WDIC Creators club