ファミリーコンピュータ
読み:ファミリーコンピュータ
外語:Family Computer

 リコーと任天堂が共同開発した家庭用ゲーム機。
目次

特徴

発売
 1983(昭和58)年7月15日発売で、同時発売はドンキーコング・ポパイ・ドンキーコングJr.の三作である。
 後に爆発的な売り上げを記録し、社会問題をも引き起こした銘機である。
 

製品

サードパーティー
 サードパーティーで真っ先にソフトを発売したのは、ハドソン(現・コナミデジタルエンタテインメント)である。
 同社は1984(昭和59)年7月20日、「ロードランナー」「ナッツ&ミルク」の同時発売を行なった。
 ちなみに、ファミリーコンピュータ最後のソフトもハドソンであった。

最初と最後のソフト

最初
 ファミコンでは無数のソフトが販売されており、任天堂のライセンスのない非合法ソフトなどもあることから、実際に市販されたソフトの数については不明で、任天堂すら把握できていない。
 最初のファミリーコンピュータ用ソフトは、前述のとおり1983(昭和58)年7月15日にファミコンと同時発売された「ドンキーコング」「ポパイ」「ドンキーコングJr.」の三作である。

最後
 任天堂のライセンスのある最後のファミリーコンピュータ用ソフトは、1994(平成6)年6月24日にハドソンの発売した「高橋名人の冒険島IV」である。

その後
 任天堂のライセンスのないファミコン用ソフトは国内外問わず存在した可能性がある。
 海外では、ファミコンソフトを多数まとめて1カセットにして違法に販売する例があるが、こういった中にもオリジナルのゲームが見られることがあったという。
 近年では、「同人ソフト」も稀に見られる。
 2016(平成28)年1月30日にコロンバスサークルが発売した製品が、ファミコン本体の内蔵音源を利用して音楽を再生するカセット型のアルバム「FC/FC互換機用 8BIT MUSIC POWER(CC-8BMP-BK)」の存在が知られる。このファミコンカセットには、オリジナルの楽曲が11曲収録されている。
 ゲームとしては、同じくコロンバスサークルが2016(平成28)年7月に発売した「キラキラスターナイトDX」が最新となる。主人公の女の子キラキラちゃんを操作し、降り注ぐ星を集めるという往年を偲ぶ王道アクションゲームである。メーカー希望小売価格は5,378円(8%税込)。

性能、仕様

主要諸元
CPURP2A03 (6502互換)
サウンド5チャンネル
メモリー不明
入出力スロット×1
コントローラーポート×1 (拡張用、標準の二つのコントローラーは取り外し不可)
AV出力端子×1 (RF出力)

CPU
 プロセッサーRP2A03は、リコー製の6502互換カスタムチップである。
 カスタムとは言っても音源が追加された以外は殆ど同じもので、CPU機能面も、一部のフラグの使い方が異なりそれに伴う一部の機能削除程度である。

メモリー

基本
 ファミコン本体の内部は、主要なLSIとしてCPUと映像LSIの「PPU」が存在し、それぞれに2KiバイトのRAMが接続されている。CPU側のメモリーはゲーム情報を保持するワークRAM、PPU側のメモリーはVRAMということになる。
 そしてカセットのコネクターを介して差し込まれるゲームカセットは、CPU側とPPU側でそれぞれ分かれており、全60ピンあるカセットの端子に、それぞれアドレスバスとデータバスが別々に出ている(詳細後述)。
 そして、CPUに接続されるプログラムROMは最大32Kiバイト(アドレスバス15本)、PPUに接続されるキャラクターROMは8Kiバイト(アドレスバス13本)となっている。
 このため、ファミコンカセット内にはROMを2個搭載する必要が生じ、これがコスト高を招いていた。加えて、プログラムにせよキャラクターにせよ搭載可能な容量が少なく、そして本体内のワークRAMも2Kiバイトしかないことから、大規模なゲームを作るのが難しかった。ちなみにこの反省で、後継機スーパーファミコンは本体内のワークRAMを当社比64倍の128Kiバイトも搭載することになった。

バンク切り替え
 メモリー不足を補うために開発された手は、バンク切り替えである。
 CPU側の回路で、カセットのコネクターとプログラムROMの間に論理回路またはカスタムLSIを搭載する方法で実現した。
 まず根本的に足りないキャラクターROMのバンク切り替えがサードパーティーによって試みられた。このROMを、16Kiバイトや32Kiバイトにするためにはアドレスバスの本数をその分増やす必要がある。PPUに接続されるのはうちアドレスバス13本なので、もう1〜2本をバンク切り替え回路に繋ぐことで、CPU側から8Kiバイト単位でのバンク切り替えが可能になり、16Kiバイトや32KiバイトのキャラクターROMを搭載することが可能になった。
 こういったバンク切り替えは、ジャレコやコナミなど自前でファミコン用カセットを生産できる契約を結んでいたサードパーティが実施していたが、任天堂は当時、この解決をディスクシステムで解決しようとしていた。ディスクシステムのRAMアダプタも、プログラム32Kiバイト、キャラクター8Kiバイトは変わらなかったが、但しこれがROMからRAMに変わった。プログラムRAMは本体に劇的に不足するワークRAM(2Kiバイト)の代わりにも使えるものだった。

メガROM
 ファミコンカセットでもサードパーティーは更なる試みを続け、プログラムROMのバンク切り替えを試み、従来の最大32Kiバイトの4倍容量となる1メガビット(128Kiバイト)やそれ以上の容量を持つ、いわゆる「メガROM」を搭載するゲームも増えた。
 コネクターとプログラムROMの間にあるLSIがメモリーを制御しており、よく使われたのはMMC(Multi-Memory Controller)や、コナミのVRCなどと呼ばれるチップである。
 ファミコンのCPUは8ビットでありアドレス空間は64Kiバイトしかない。うち、プログラムROMはCPUからみて$8000〜$FFFFの32Kiバイトのメモリーアドレスに配置されるため、そのままではそれ以上に増やしようがない。そこでこの32Kiバイトの領域を例えば8Kiバイト単位に区切って4つのページを作り、実行中でない部分を切り替えて使うようにしていた。
 キャラクターROMのアドレスバスはPPUに繋がっているためバンク切り替えは概ね8Kiバイト単位でまるごと変更するものが多かったようだが、ファミコン時代の後期にはプログラムROMも余裕が出てきたためキャラクターROMの情報をプログラムROM側に持ち、一方のプログラムROMをRAMに変えたキャラクターRAMとして任意に書き換え可能としたゲームソフトも少なからず存在した。

バッテリーバックアップ可能なゲーム
 バッテリーバックアップ可能なゲームも幾つか登場している。
 こういった大規模なゲームは概ねメガROMであり、上述したMMCなどの制御機構がカセットのコネクターとメガROMの間に存在し、これがキャラクターRAMなどにも繋がっているが、それらとは別にもう一つSRAMがカスタムLSIに接続されていて、更にこのRAMには電池が繋がっており、これによってファミコンの電源を落とした後も電源を供給し内容を保持することができた。
 なお、ファミリーコンピュータ本体はこういったバッテリーバックアップが想定していないため、一部の例外を除いて、「リセットボタン」を押しながら電源を切る必要があった。リセットボタンを押すとCPUが停止するため危険はないが、押さずに電源を切ると回路の電圧低下・電流低下中にCPUが誤作動を起こす可能性があり、これでバックアップされたメモリーに対して不正な信号を送りデータを破壊してしまう可能性があった。そこで、CPUを止める目的でリセットボタンを押しながら切るという作法が生まれた。
 なお、後継機スーパーファミコンは最初からバッテリーバックアップを想定した保護回路が存在するため、リセットボタンを押す必要がない。むしろリセットボタンを押してしまうと保護回路が働かなくなる可能性があり、このためゲームの取扱説明書では「リセットボタンを押さず電源を切る」という説明が書かれるほどであった。

グラフィック
 グラフィックは、リコー製のPPU、RP2C02で処理されている。
 画面は256×240ドットである。ここに8×8ドットのキャラクターを敷き並べることで画面を作る。このキャラクターには4色まで使用可能。
 また、8×8ドットで3色のスプライトを64枚まで使用でき、横に8枚まで表示可能。スプライトキャラクターはROM内に256個まで持つことが可能である。
 但し、RF出力で縦240ライン全てを出力することはできず、上下端は出力されず実質224ライン程度が有効である。このため上下端は画面が乱れていても問題がないため、スクロールなどの際に上下端が異常表示になったとしても映像に影響はでなかった。
 最大出力可能な色数は諸説あるが、色はRGBで指定するのではなくNTFS信号を直接生成して出力する仕様であるため、色のパラメーターは64パターン存在するが同一色が存在する。任天堂の公式には52色としている。

サウンド
 ファミコンでは標準で搭載される物のほか、カートリッジにも音源が内蔵可能となっていて、長い歴史の中で様々な音源が使われた。
 モノラルのみで、基本は電子音だが、それでも音環境は豊かであった。

標準音源

チャンネル数
 標準音源はAPU(Audio Processing Unit)とも呼ばれ、カスタムCPU内に内蔵され1チップとなっている。矩形波2声、三角波1声、ノイズ1声、ΔPCM 1声で、合計で5声ある。この5チャンネル中、計3チャンネルはPSGのような音源である。PSGとはAY-3-8910やその互換品のことでこれはPSGではない、などと言う人もいるが、技術的には同様のものである。
 そしてこの当時、5声発音できるゲーム機など他にはなく、音楽面では圧倒的に強いゲーム機だったと言える。
 これはCPUの名前から、「2A03音源」と俗称されている。CPUの1ピンから矩形波、2ピンから三角波、ノイズ、ΔPCMが得られるが、この信号はCPUから出力された時点でアナログオーディオ信号である。

矩形波
 矩形波の発生装置が2チャンネル存在する。音量は16段階。デューティ比(上下比率)を4種類(12.5%、25%、50%、75%)に変更可能で、多少音色を変えることが可能。但し25%=75%なので、実質的には3種類である。
 12.5%の矩形波はラッパの様な音、25%の矩形波はノコギリを挽くような音、50%の矩形波は典型的な電子音で、いわゆるBEEP音である。

三角波
 三角波の発生装置が1チャンネル存在する。4ビットの三角波で音量変更は不可。但し4ビットしかないので、実際には階段状にしか鳴らない。
 BGMのベースパートで使われることが多かったが、大胆にもメインパートを奏でたこともある(ドラクエ3ドラクエ4の「ほこら」など)。

ノイズ
 ノイズの発生装置が1チャンネル存在する。爆発音などに使用される。音量は16段階。
 短周期と長周期(ホワイトノイズ)があり、音楽で使う場合にはキック、スネア、ハイハット、タムといったドラムパートで使われた。但し、最初期型のファミコン(コントローラのボタンが四角いゴムのもの)では短周期ノイズは利用できず、短周期を指定して鳴らしても長周期のホワイトノイズしか鳴らない。
 基本的に先の矩形波にせよ三角波にせよ打楽器向きではないので、そういった音を出す時はこのノイズチャンネルを鳴らす。MSXなどのPSGと違い完全にチャンネルが独立しているため、必ずしも矩形波や三角波などと同時に鳴らす必要はなかった。

ΔPCM
 最後の1チャンネルはDPCM(ΔPCM)である。1ビットΔ変調で、DACは7ビット(解像度は6ビット)。周波数は16段階で、最高で33.14KHzである。
 まだPCMシンセなども殆ど存在しないファミコンの時代にPCM音源が搭載されているという事実は驚きであるが、安価なチップゆえに音質は良くない。その気になればPCMで喋らせることも可能だが、相応にメモリーを消費するため実際に使用されることは希で、BGMで使われるようになったのはメガROMなどが可能となった頃からである。

拡張音源
 ファミコンカセットのコネクターにはアナログ信号の端子が付いており、45ピンが本体→カセット、46ピンはカセット→本体である。この信号はそのまま音声出力に出力される。
 本体内蔵音源だけでも当時の低価格ゲーム機の中では最強クラスであったが、更にこの機能でカセット側に音源を積めるようになっていたため、音楽環境に無限の可能性を提供していた。
 例えばファミリーコンピュータ ディスクシステムでは、更に2オペレーターの波形メモリー音源が1声追加された。それも含め主なものに、次のような音源がある(順不同)。
 カートリッジの45ピンからファミコンへ拡張音を与えることが可能。これがCPU内蔵の標準音源と合成され、46ピンから出力される。拡張音源を持っていないカートリッジは、45ピンと46ピンは短絡されている。
 なお、ミキシングのバランスなどはファミコン本体のロットごとにまちまちとされ、またRF接続でテレビに繋ぐ際のRF変換時には高音域がかなり劣化するという弱点があり、高音質での演奏は難しかった。

コントローラー
 コントローラーは標準で二つが搭載されており、本体と直結されているため取り外しはできないが、ほかに前面の拡張コネクターから別売のコントローラーを接続可能となっていた。
 標準コントローラーのボタンは、古いものはゴムの角形、新しいものはプラスチックの丸形となっている。
 
 1P用と2P用では仕様が異なっており、1P用にはスタートボタンとセレクトボタンが中央に配置されている。対し2Pにはそれがない代わりに中央上にマイク、十字ボタンの上にボリュームのスライダーが付けられている。但し、後年に発売されたAV仕様ファミリーコンピュータではこのマイク機能は省かれている。
 なおマイク、CPU側からはサンプリングに使えるほどの高音質でそれが得られるわけではなく、音声が鳴っているかどうかを判定する程度でしかなかったとされている。このためこのマイク機能が使われているゲームは殆ど無く、対応していてもほぼ裏技で使われる程度だった。

関連製品

後継機、関連機
 様々なものがあるが、初期の頃に最も有名だったのは、シャープの「ツインファミコン」である。
 
 後継機スーパーファミコンの後、1993(平成5)年にはNEWファミコンと銘打ってモデルチェンジ版(廉価版)が発売された。
 
 しかしこれらも、2003(平成15)年9月、20年の歴史を以てして完全に発売終了となった。
 現在市場に出回っている互換機は、任天堂の非ライセンス品であり、言うなればパチものである。

特徴的なハードウェア

補足

カートリッジスロット
 全部で60ピンである。挿入口の端に斜め切り欠きがある手前側が、手前から見て左端が1番ピン、右端が30番ピン、奥の左端が31番ピン、右端が60番ピンとなる。
 頭に-が付いている信号は、負論理であることを表わす。
信号名ピン信号名
GND131RF VCC
CPU A11232φ2
CPU A10333GPU A12
CPU A09434GPU A13
CPU A08535GPU A14
CPU A07636CPU D7
CPU A06737CPU D6
CPU A05838CPU D5
CPU A04939CPU D4
CPU A031040CPU D3
CPU A021141CPU D2
CPU A011242CPU D1
CPU A001343CPU D0
CPU R/ ̄(W)1444 ̄(ROMSEL)( ̄(A15)+ ̄(φ2))
 ̄(IRQ)1545SOUND IN
GND1646SOUND OUT
PPU  ̄(RD)1747PPU  ̄(WR)
VRAM  ̄(A10)1848VRAM  ̄(CE)
PPU A061949PPU  ̄(A13)
PPU A052050PPU A07
PPU A042151PPU A08
PPU A032252PPU A09
PPU A022353PPU A10
PPU A012454PPU A11
PPU A002555PPU A12
PPU D02656PPU A13
PPU D12757PPU D7
PPU D22858PPU D6
PPU D32959PPU D5
VCC (+5V)3060PPU D4
 ピッチは0.1インチ(2.54mm)で、基板厚は1.2mmである。
 構造的に、左側にCPUのピンが、右側にPPUのピンが配置されていることが分かる。
 32番ピンφ2はM2とも書かれ、システムクロックである。45番SOUND INはファミコン本体の音源RP2A03の出力であり、カセット側に拡張音源があるならSOUND INとミックスして46番SOUND OUTに出力する。音源がない場合は45番はそのまま46番に直結する。

拡張コネクタ
 ジョイスティックなどを接続するための拡張端子で、全15ピン。汎用品ではなくファミコン専用の端子であり、単品での部品の入手は難しい。
 その全ピンの使途は明らかとなっていないが、実際には15ピンを全て使うことはなく、用途により5ピン程度が使われる。
 なお、アメリカ向けのNESや日本のNewファミコンでは7ピンが2個(1P用と2P用)である。ファミコン互換機は部品が入手できないためDsub9ピン端子が使われていてATARI仕様と同じ部品であるが、ピンアサインは異なるため接続すると機器を破損する恐れがある。
 15ピンのうち長辺が1番から8番、短辺は9番から15番である。
  1. GND
  2. MIC
  3. ?
  4. 光線銃
  5. 光線銃
  6. ?
  7. ?
  8. 2P DATA(OUT)
  9. 2P CLK
  10. ?
  11. ?
  12. P/S
  13. 1P DATA(OUT)
  14. 1P CLK
  15. VCC(5V)
 上下左右ABなどのボタンがそのまま繋がっているわけではなく、クロック端子とデータ端子でデータが送信される、インテリジェントな仕様となっている。コネクターの形状は全く異なるが、このプロトコルはスーパーファミコン用のコントローラーと同じとされ、コネクターの変換ができればファミコンにスーパーファミコン用のジョイスティックが接続できる。

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