元帥 (日本)

読み:げんすい
品詞:名詞

旧日本軍において、特に戦功が大なる大将に与えられる称号。

明治初期の1871(明治4)年7月〜1873(明治6)年5月に元帥及び大元帥階級が存在し、西郷隆盛が陸軍元帥に任じられていた。しかし、これは1872(明治5)年10月の官制改正によって一等官に元帥、二等官に大将の階級が定められたものによってであり、翌1873(明治6)年5月の官制改正で元帥の階級が廃止されると共に大将の階級が一等官に改められ、西郷隆盛も陸軍大将となっている(ちなみに第一号の陸軍大将)。

その後、1898(明治31)年1月20日に「朕中興ノ盛運ニ膺(あた)リ開国ノ規謨ヲ定メ祖宗ノ偉業ヲ紹述シ臣民ノ幸福ヲ増進シ以テ国家ノ隆昌ヲ図ラントス茲(ここ)ニ朕ガ軍務ヲ輔翼セシムル為メ特ニ元帥府ヲ設ケ陸海軍大将ノ中ニ於テ老巧卓抜ナル者ヲ簡選シ朕ガ軍務ノ顧問タラシメントス其所掌ノ事項ハ朕カ別ニ定ムル所ニ依ラシム」という元帥府設置の詔が出され、「元帥」と付くものが復活した。しかしこれは陸海軍大将に与えられる「称号」であり、階級ではない。したがって、西郷隆盛以外の日本人の場合、「陸軍元帥」または「海軍元帥」とあればそれは「元帥陸軍大将」または「元帥海軍大将」の略称としての「元帥」でしかない。よく勘違いされる点なので注意が必要である。

なお、大元帥は1882(明治15)年1月4日に天皇が軍人に下した軍人勅諭では「朕ハ汝等軍人ノ大元帥ナルゾ」とあるが、これも全軍の最高指揮者としての称であり、階級ではない。

元帥は元帥徽章を佩用し、元帥刀を賜わり、副官として佐、尉官各1人が附随した。また、元帥は元帥府にあって天皇の「軍事上の最高の顧問」となり、軍事参議院に列した。これは国務における元老と対になる立場であったが、首相と同様に実際に軍事事項に関して天皇に対して責任を負っていたのは陸海軍大臣と参謀・軍令の両総長であり、責任の所在をはっきりさせることを重んじた昭和天皇は元帥に頼ることは無かった。

元帥にあらざる大将は満65歳という現役定限年齢(定年)があったが、元帥たる大将には定めが無く、実質的に終身現役となった。これは政党の勢力伸長に対して、軍部の権威を維持するためであった。この考え方がそもそも保守的・反動的であるが、終身現役であるため、老齢者が多く、その傾向をより一層増す働きしかもたらさなかった。また、終身現役であるため、艦隊派の将校は彼らの領袖として君臨し続けてきた加藤寛治大将の65歳の誕生日が近づいてくると彼を元帥にしようと画策した(失敗に終わる)。

元帥の称号を得た大将は元帥府設置設置条例と同時の1898(明治31)年1月20日に陸軍3名(山県有朋、小松宮彰仁親王、大山厳)、海軍1名(西郷従道)が出て以降、30名(陸軍17人、海軍13人)が居る。陸軍の元帥が17人に対し、海軍の元帥が13人というのはその大将の人数比(陸軍134人、海軍77人)からすると海軍側の割合が多いように見えるが、海軍の元帥は死亡直前後に元帥に列することが多く(死没後またはその直前の授与は海軍6名、陸軍1名)、現役の元帥の人数は少なかった。その中にあって東郷平八郎と伏見宮博恭王は元帥に列せられてから10年以上その地位にあったが、元帥であるという以外に日露戦争の英雄、皇族という二重のステータスシンボルを持っており、海軍軍人のトップであり続けた。その彼らが艦隊派に与したことは日本海軍、ひいては日本が大東亜戦争へと向かって行く大きな要因となった。

「元帥」という言葉は、仏教における大元帥明王から来ているとの説もあるがはっきりしない。

コラム(元帥陸海軍大将一覧)
○陸軍
    氏名           授与年月日 死亡年月日
  山県有朋         1898.01.20 1922.02.01
  小松宮彰仁親王   1898.01.20 1903
  大山厳           1898.01.20 1916.12
  野津道貫         1906.01.31 1907.09.18
  奥保鞏           1911.10.24 1930.07.17
  長谷川好道       1914.01.09 1924.01.28
  伏見宮貞愛親王   1914.01.09 1923.02.04
  川村景明         1914.01.09 1926.04.28
  寺内正毅         1916.06.24 1918.11.03
  閑院宮戴仁親王   1919.12.12 1945.05.20
  上原勇作         1922.04.27 1933.11.08
  久邇宮邦彦王     1929.01.27   同日歿  
  梨本宮守正王     1932.08.08 1951.01.01
  武藤信義         1933.05.03 1933.07.28
  寺内寿一         1943.06.21 1946.06.12
  杉山元           1943.06.21 1945.09
  畑俊六           1944.06.02 1962.05.10
  
○海軍
    氏名           授与年月日 死亡年月日
  西郷従道         1898.01.20 1902.07.18
  伊東祐亨         1906.01.31 1914.01
  井上良馨         1911.10.31 1929.03.22
  東郷平八郎       1913.04.21 1934.05.30
  有栖川宮威仁親王 1913.07.07   同日歿  
  伊集院五郎       1917.05.26 1921.01.13
  東伏見宮依仁親王 1922.06.27   同日歿  
  島村速雄         1923.01.08   同日歿  
  加藤友三郎       1923.08.24 1923.08.25
  伏見宮博恭王     1932.05.27 1946.08.19
  山本五十六       1943.04.18   同日歿  
  永野修身         1943.06.21 1947.01.05
  古賀峯一         1944.03.31   同日歿