ハードディスクドライブ
読み:ハードディスクドライブ
外語:HDD: Hard Disk Drive

 固定ディスクとも呼ばれる装置で、高速回転した磁気ディスクにデータを蓄積する装置。一般にディスク部分には固い金属板やガラス板が用いられるため、この名がある。略称「HDD」。
目次

概要
 メモリー類を除く他の外部記憶装置に比べ容量と高速性に優れる特徴があり、電子計算機の高性能化には欠かせない装置の一つとして広く普及した。
 開発当初は非常に高価で、メインフレームなど大型電子計算機用の装置であったが、1980年代半ば頃にはパソコンにも搭載されるようになり、低価格化も進んだ。
 高速性、大容量性という点から、仮想記憶用のメディアとして利用されることが多い。
 また、いくら容量があっても絶対に足りないメディアでもある。

栄枯盛衰

起源
 世界初のハードディスクドライブはIBMが1956(昭和31)年に開発した「IBM 350」という装置で、IBMの商用コンピューター「IBM 305 RAMAC」などで使われていた。
 この装置は直径24インチ(60.96cm)の回転盤50枚で構成されており、1文字7ビット(6ビットのデータと1パリティビット)を500万文字ぶん記録できた。1バイトを6ビットとすれば、5Mバイトのデータを保管できたことになる。5Mバイトは今では誤差として切られる程度の矮小な容量だが、この当時としては膨大な容量であり、この頃主流だったパンチカード6万枚分以上の情報量を持っていた。
 その後の技術革新によりディスクの密度は向上し、小型化、大容量化への道を進むこととなる。

買収・統合
 パソコンが衰退し、携帯端末が普及するようになると、ストレージの主力もHDDからフラッシュメモリーへと移り変わっていった。それでもパソコンには欠くことができない記録媒体であり続けているが、市場規模は減少の一途である。
 かくして、多くの需要が時代から現在に至るまでの歴史の中で、HDDサプライヤー(HDDメーカー)は合併と統合あるいは廃業が進んだ。
 1986(昭和61)年頃には76社ものHDDサプライヤーが存在していたが、統合や廃業が進み、その7年後の1993(平成5)年には36社と半分以下にまで減少。そしてこれを著している2015(平成27)年現在では、Seagate TechnologyWestern Digital東芝のわずか3社しか残っていない。

特徴

構造
 ハードディスクと呼ばれる磁気ディスク(これをプラッタという)を高速回転させ、その上で磁気ヘッドを移動させ、目的の位置で情報の読み書きをする。
 磁気ヘッドは、プラッタの高速回転に伴い発生する風圧によりわずかな距離を浮いている(浮上距離は約10nm)が、そのまま停止すればディスク表面に接触し、故障の原因となる。
 その昔、標高4000m級のハワイ・マウナケア山に、コンピューターと共にハードディスクドライブを持ち込んだものの、気圧が低すぎて磁気ヘッドが浮かずにディスクが壊れてしまった、という有名な逸話がある。

記録方式
 HDDの進化の歴史は、容量向上の歴史であり、それはすなわち記録密度向上の歴史であった。
 記録密度は記録方式やヘッド技術に依存するが、ある技術が記録密度向上の限界に近付いたとき、また新たな記録方式が考案され、幾度となく限界を乗り越えて現在にまで至っている。
 21世紀に入ってからもなお技術は進化しており、次のような記録方式が使われていたり、研究されていたりする。

ヘリウム
 通常のHDDで、プラッタ間を満たす気体は空気である。
 これに代わり登場したのは、空気の代わりにヘリウムを用いた「ヘリウム充填HDD」と呼ばれるものである。
 HDDはディスクを回転させるが、この時の空気抵抗が減少し、動作温度を4℃〜5℃程度減らすことが可能なほか、モーターの省電力化も可能なこと、プラッタ間を狭くすることができプラッタ枚数を増やして大容量化したり容量そのまま小型軽量化することが可能となった。

弱点
 高速回転しているディスクに磁気ヘッドが非常に接近する構造から衝撃などに大変弱く、場合によってはヘッドや記録面が破損し読み書きできなくなることもある。これを「ディスククラッシュ」などと呼び、ユーザーに恐れられている。
 現在の製品は初期に比べ耐衝撃性能が向上しているが、危険性はなお多く、取り扱いには慎重を要する。一部のメーカーの意見では、机上にマシンを設置した状態で机を強く叩くような程度でも破損することがあるとされる(一般に瞬間的な垂直方向への衝撃に弱い)。対策としてはこまめにデータのバックアップを取る以外にはない。
 なお、ノートパソコンなどモバイル向けの製品では、非動作時にはヘッドが待避領域に移動する(リトラクタブル機能)などの対策が施されている場合が多い。

退避方式
 未使用時、ヘッドをどこに退避するかにより、現在は大きく二つの方式に分けられる。

補足

容量表記
 ハードディスクドライブの容量は、伝統的に未フォーマット時における物理的な容量で表わされ、かつ単位は国際単位系に準じる。つまり、100Gバイト=100,000,000,000バイトである。
 一方のパソコン用OSは古くから1K=1024などの変則的表記を行なってきたため、ディスクの容量が増えるにつれ両者の差は開き、結果としてハードディスク計算などと呼ばれている。アメリカでは訴訟も頻発しているとされる。
 しかし、K、M、G、といったものを1024単位で計算することが、そもそもの間違いである以上、ハードディスクドライブの容量表示に罪はないと考えられる。
 現在では、1024単位は国際電気標準会議(IEC)が新規にバイナリ接頭語として記号を策定したため、こちらに移行することが推奨されている。

リムーバブルディスク
 通常のハードディスクドライブは固定式だが、ディスク媒体部分のみを交換できるようにしたリムーバブルハードディスクと呼ばれる製品もある。
 また、近年ではディスク部分を交換するのではなく、ハードディスクドライブそのものを取り替えてしまう「リムーバブルハードディスクドライブケース」も普及している。ケースからパソコンへは、USBシリアルATAなどで接続する製品が多い。

インターフェイス
 ハードディスクドライブはあくまでも補助記憶装置であり、メモリーなどの主記憶装置とは一線が画された存在である。
 コンピューターへの接続方法や制御方法などは、誕生以降様々に模索され続け、今に至っている。

寸法

インチ
 ハードディスクドライブは、アメリカ由来ということもあり、3.5インチHDDまではインチ表記が多い。
 なお、2.5インチ以下のサイズは日本やヨーロッパ由来が多く、このためミリメートル表記が増える。実際に、ドライブを固定するねじも、3.5インチHDDはインチねじであるが、2.5インチHDDはミリねじである。

径による分類
 おおむね、中のハードディスクの直径で表わされる。

筐体厚による分類
 ドライブの筐体の厚みも、様々なものがある。既知のものは以下のとおり。

回転数
 ディスクが1分間に何回転するかというもので、単位はrpmを使う。
 回転数自体に規格があるわけでもないが、主流は次の通りである。
 回転数が多い方が読み書きの速度は速くなるが、速くなればなるほど、熱を持ちやすく、騒音も大きくなり、エラーが発生しやすくなり、振動にも弱くなり、結果として壊れやすくなる。

寿命
 ハードディスクドライブの寿命については、Googleが実施した研究結果「Failure Trends in a Large Disk Drive Population」が存在する。
 結論としては、最初の3ヶ月から6ヶ月の間は比較的に故障率が高く(初期不良)、その後は安定して2年程度は稼働し、その後は平均的に故障率が高くなる(経年劣化)、とされている。

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