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APS-Cサイズ
辞書:文化用語の基礎知識 芸術・視覚編 (LAVART)
読み:エイピーエススィーサイズ
外語:APS-C Size
品詞:名詞

写真システムの一つAPSで使われる画面サイズの一つ。APS自体は全く普及せず消滅したが、現在この語はデジカメ用語としてよく使われている。

目次
概要
画面サイズ

APSでは通常の35mmフィルムよりも一回り小さなフィルムを使用しているが、16:9のワイド撮影に対応している。

このうちAPS-Cサイズは横23.4mm×縦16.7mmで、アスペクト比は3:2として撮影したものをいう。

フィルム自体はAPSシリーズで共通だが、カメラ側の設定で、このサイズを選ぶことができる。

16:9となるAPS-Hサイズの左右を切り落とした画面比率となり、従来の35mmフィルム版と同じであることから、APS-C(C=Classic、クラシック)と呼ばれている。

デジカメとAPS

APS自体は全く普及しなかったが、デジタルカメラのカタログスペック等に「APS-Cサイズ」「APS-C相当」といった記述が見られる。

これは、デジタルカメラで使われている撮像素子(CCDCMOSなど)の大きさが、APS-Cフィルムのサイズとほぼ等しいことを意味している。

実際にはイコールではなく、例えばキヤノンEOS 30Dのものは22.5mm×15mm、ニコンのものは23.7mm×15.6mmである。

元々は妥協の一作であったが、圧倒的に普及したため、デジタルカメラ用の固体撮像素子においては、サイズ規格の標準の一つとなっている。

特徴

APS-Cサイズの撮像素子の露光面は、銀塩の35mmフィルムの露光面(フイルム面)と比較すると狭く、受光部の長さは約2/3しかない。

このため、35mmフィルムと同じ画角を得ようとした場合、35mmフィルムを使用したカメラの撮像レンズの焦点距離と比較してデジタルカメラの撮像レンズの焦点距離は約2/3に短くなる。

つまり、実撮影画角は、35mmフィルム用の焦点距離の表記を1.5〜1.6倍したレンズとほぼ同じ画角になる。言い替えれば、同じレンズを使用しても焦点距離は35mmフィルムの焦点距離より1.5〜1.6倍程度長くなってしまう。

この特徴は、望遠撮影には有利となる一方、広角には不利となる。

例えば18mmレンズを使っても28mm相当(一般的な標準レンズの広角端)にしかならないため、画角不足に陥ることになる。このため、デジタル一眼レフカメラが登場した直後にリリースされたデジタル用のレンズは、広角レンズが多かった。

現状と今後
現状

APS-Cサイズ撮像素子は35mmフルサイズより小さいが、撮像素子の大きさは必ずしも35mmである必要はない。そもそも35mmフィルム規格は完全に偶然の産物で、単に普及しているというだけであり、その大きさに必然性は無いからである。

撮像素子は半導体であり、大きくなるとカメラが大きく、重くなり、歩留まりも悪くなるので必然的に高価になるが、画素あたりの光量が多くなるため画質は向上する。一方、小さくなるとカメラを小型、軽量にできる反面、画素あたりの光量が減り画質が悪くなる可能性がある。後者の問題は、素子サイズを維持したまま高画素化した場合にも見られる問題である。

ただ、小さいからといって性能が著しく劣るわけでもなく、現在のAPS-Cサイズ撮像素子なら充分な画質が実現されている。一眼カメラに限らず、コンパクトデジカメでも同様である。その上、素子が小型であればその分全体が小型軽量に済むという利点もある。

また、キヤノンのEOS-1D Mark IVのように、プロ仕様のフラッグシップモデルでありながら35mmを採用せず、より小型のAPS-Hサイズとするような例もある。

35mm機が欲しいという声もある一方で、無理に大型化する目的効果も問われ始めている。

今後の方向性

市場

市場には「コンパクトデジカメ」という需要が強くある。レンズの交換は出来ないが、小型軽量が求められるカテゴリーである。

レンズ交換式カメラの場合もコンパクト化の需要はあるらしいが、特に一眼レフカメラに対して小型化という要望は強くはない。実際、小型の一眼レフカメラのフォーサーズシステムにユーザーは食指を動かさなかった。そこで、より小型化を求める向きにはミラーレスの一眼カメラのマイクロフォーサーズシステムが提案されている。

一眼レフカメラの場合、既に35mmフィルムに合わせたレンズ群が充実しており、これが流用できることが大きなメリットである。ただ、35mmフィルム用に設計されたレンズ、あるいは一部のみを変えて互換性を持たせたレンズを用いる限り、その仕様に縛られて大幅な小型化は望めない。また、行きすぎた小型化はカメラのホールディングを悪くする。


APS-Cサイズ

メーカーが、APS-Cサイズにどれだけ本腰を入れようとしているのかは、不明な点が多い。

APS-Cサイズ専用レンズ製品のうち、ズームレンズは広角に偏りがちであまり多くなく、固定焦点レンズなどは非常に少ない。35mm用のレンズが使えるため、それを用いることが前提となっている。

だが、デジカメ全体が35mmに大型化するとは考えにくい。時を経ても撮像素子は思ったほど安くならなかったため、ミドルクラスの機種が一気に35mm化することは当分考えられず、またコンパクト路線のデジカメには35mmフルサイズ化はむしろデメリットにしかならない。

互換性を維持したまま小型化(特にミラーレス化など)は不可能となると、APS-Cサイズは現状のまま当分使われ続けることになるのだろう。


小型化

APS-Cサイズが普及した中に新たに登場したのは、APS-Cより更に小さい撮像素子を使った、レンズ交換式カメラである。

まず登場した、小型撮像素子を使う一眼レフカメラのフォーサーズシステムは失敗した。これにより、従来のレンズと互換性がないが小型の一眼レフカメラが欲しいかという市場への問いかけは、消費者側から「要らん」と回答されたことになる。

そこで、ミラーレス化(つまり一眼レフではない)し、筐体も小型化したマイクロフォーサーズシステムが登場した。これはレンズ交換式カメラに興味を持ち始めた人たちに大変うけ、参入メーカーが増えている。


住み分け

APS-Cは維持されているが、ハイエンドは35mm、ローエンドはフォーサーズなど小型のものに、住み分けが進んでいるようである。

今後、さらに互換性のないサイズが出て来るのかどうかは定かではないが、どのみちマウントの互換性がない機種を投入するのであればAPS-Cにこだわる理由が全くないこともあり、より柔軟にサイズが選ばれていくことになるのだろう。

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