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ヒッグス場 |
辞書:科学用語の基礎知識 素粒子・用語編 (NPARTY) |
読み:ひっぐす-ば |
品詞:名詞 |
素粒子物理学の標準理論により説明される、素粒子の質量を決めるとされる場。宇宙の誕生から現在までの進化にも深く関わる。
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概要 |
物質になぜ質量があるのか、という根本的な問題を解決させ、理論と実際の間の矛盾を解消するために導入された。
現時点において、多くの観測結果を矛盾なく説明する理論を構築した場合、本来は各種の粒子には質量が無いことが予測される。だが、実際に観測される粒子には質量がある。
予測と事実を整合させるために「ヒッグス場」という場を想定し、「ヒッグス機構」という相互作用を導入することで、この矛盾はなくなる。これが、理論の骨子である。
実際にヒッグス場(というよりは、ここから出てくるヒッグス粒子)が観測されており、ヒッグス場の実在は確定している。
特徴 |
場・粒子・機構 |
理論で説明れる場がヒッグス場で、この場によって質量が与えられる相互作用をヒッグス機構という。そしてヒッグス粒子とは、このヒッグス場を量子化したもの(粒子的な描像)である。
簡潔に説明すれば以上で終わりだが、より分かり易く言うと、たとえばヒッグス場を水面にたとえたなら素粒子はそこに浮かぶブイのようなものである。このブイは常に水の抵抗を受け続けており質量が存在する状態である。そしてヒッグス粒子は、水面から跳ねた滴のようなものと言える。
人類が観測可能なものは粒子のみなので、このうちヒッグス粒子の観測に力が注がれた。粒子同士を超高速で衝突させるという方法であり、ヒッグス場の水面が強く叩かれて飛び出した滴(ヒッグス粒子)が水面に再び落ちた時の波紋でヒッグス粒子が見つかったかどうかを検出する、という方法が用いられ、無事に発見された。
この場・粒子・機構の関係は理論の肝だが、直感的でないので分かりにくい。たとえば別の粒子でたとえると、電子の持っている電荷が変動させるのが電磁場であり、電磁場の粒子的な描像は電磁波(光子)である。また重力も、重力場とその励起描像としての重力子、のように言うことができる。
モード |
ヒッグス場は4つの自由度を持っており、また、4種類の等価な励起が可能(4つのモードを持っている)である。
モードを分類すると3+1の二種類に分かれ、自発的対称性の破れにより「質量のない3つのモード」と「質量を持つ1つのモード」という励起状態を持つ場に変化できる。どのモードでも自由度の数は変わらないが、内容は異なる。
「質量のない3つのモード」は、様々な素粒子の場(これらも質量を持たない)と結びついて「両者が結びついたかのような新たな粒子」として振る舞う。我々が観測できるのはこの複合した場(粒子)であり、これがあたかも質量を持った一つの実体であるかのように見える。
具体的には、弱い相互作用を媒介する3つのウィークボソン(W−、W+、Z0)と混ざり合い、これらに質量を与える。またこの3つのモードは、物質の元になっている、電子などのレプトンや、陽子や中性子や中間子などの元になるクォークとも結びつき、これらにも質量を与える。
クォークは大きな質量を持っているが、実際にヒッグス場がクォークに与える質量は僅かで、この小さな質量の存在により対称性が破れることから大きな質量を得るという二段構えの仕組みで質量が得られていると説明される(なお、ヒッグス場を用いないで説明する理論も提唱されている)。
「質量を持つ1つのモード」は、ヒッグス場のうち、素粒子に質量を持たせている成分ではないモードを励起することに対応する。
一般に「ヒッグス粒子」と呼ばれているのは、このモードの場を量子化した粒子である。
リンク |
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