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プルトニウム
辞書:科学用語の基礎知識 原子元素・名称編下 (NELEMN7)
読み:プルトニウム
外語:Pu: Plutonium
品詞:名詞

銀白色の金属元素の一つ。超ウラン元素の一つ。

目次
情報
基本情報

一般情報

原子情報

物理特性
同位体

質量数は、228から247までが確認されており、その中に核異性体も存在する。

安定同位体は存在しない。全ての同位体が放射性同位体である。

崩壊の種類については一例。これとは異なる崩壊をすることもある。

同位体核種天然存在比半減期崩壊崩壊後生成物
228Pu α崩壊224U
229Pu α崩壊225U
230Pu α崩壊226U
231Pu β+崩壊231Np
232Pu EC崩壊232Np
233Pu β+崩壊233Np
234Pu EC崩壊234Np
235Pu β+崩壊235Np
236Pu2.858年α崩壊232U
自発核分裂(SF) 
237Pu45.2日EC崩壊237Np
α崩壊233U
238Pu微量87.74年α崩壊234U
自発核分裂(SF) 
Si核放射206Hg
Mg核放射180Yb
239Pu微量24,110年自発核分裂(SF) 
α崩壊235U
240Pu6,564年自発核分裂(SF) 
α崩壊236U
241Pu14.35年β崩壊241Am
自発核分裂(SF) 
α崩壊237U
242Pu37.33万年自発核分裂(SF) 
α崩壊238U
243Pu β崩壊243Am
244Pu微量8080万年α崩壊240U
自発核分裂(SF) 
崩壊244Cm
245Pu β崩壊245Am
246Pu10.84日β崩壊246Am
247Pu2.27日β崩壊247Am
性質
外観等

通常状態

管理が厳しいプルトニウムは、科学者ですらそうおいそれとお目にはかかれない代物であるが、それは、非常に重く、そして「熱い」金属である。

比重が19.8(水=1)なので、つまりの19.8倍重い。例えば、は水の7.85倍、は水の11.34倍、でも水の19.32倍であるため、それらよりも更に重いことが分かる。

またプルトニウムの熱さの理由は、プルトニウムがα崩壊α線を出す放射性物質なためである。α線は線源から数cmしか移動できず、運動エネルギー熱エネルギーに変化する。このため、プルトニウムは熱を出している。


酸化状態

プルトニウムの単体は金属光沢を持っているが、空気に触れると直ぐに酸化して光沢を失う。

用途

核燃料核兵器原料などに使われる。

同位体のうち、238Pu原子力電池等にも使われ、核崩壊時に発生するα線を熱源として熱電対で電気を作る。人工衛星宇宙探査機、あるいは心臓ペースぺーカーなどにも使用されている。ただ、心臓ペースぺーカーの場合は患者死亡後などに取り出す必要があり手間なので、現在はリチウム電池に置き換わっているようである。

239Puと241Puは核分裂を起こしやすく、大量のエネルギーを取り出せるため、原子力エネルギー源として利用される。

ウランとプルトニウムを混合した核燃料をMOX燃料といい、プルサーマルとして日本でも使われている。ただし、MOXだけにプルトニウムが含まれている訳ではく、普通の核燃料にも含まれている。上述のように、普通の原子炉でも238Uから239Puが生成され、この作られたプルトニウムもウランと一緒に原子炉内で核分裂して燃料になっている。

崩壊

かつては天然には存在しない元素と考えられていた。天然に存在する最大の原子番号の元素はウランと考えられたため、「超ウラン元素」と呼ばれていた。しかし現在では、天然にもごくごく微量が存在することが知られている。

例えば、238Uが「2β崩壊」(確率2.2×10−10%)を起こすと、238Puが生ずる。

また238Uは、中性子捕獲により239Uに変化し、β崩壊して239Npに変化し、更にβ崩壊して239Puに変化する。

このため、239Puや238Puは天然にごく微量存在すると考えられている。

生成

原子炉では、次の順序にて、劣化ウランとも呼ばれる燃えないウランウラン238(238U)から、中性子捕獲で核燃料になるプルトニウム239(239Pu)が生成される。

  1. 238U(ウラン238) + n → 239U(ウラン239)
  2. 239U → β崩壊(半減期は23.45分) → 239Np(ネプツニウム239)
  3. 239Np → β崩壊(半減期2.3565日) → 239Pu(プルトニウム239)

もちろん実際にはこの反応だけではなく同時に多数の反応があり、結果、様々なプルトニウム同位体などが作られる。

軽水炉の燃料は235Uを3〜5%程度に濃縮した「低濃縮ウラン」だが、運転中に238Uが中性子捕獲で次々と239Puに変化し、これが更に核分裂をしている。原子力発電所の平均30%は生成されたプルトニウムの核分裂で発電されていると言われており、燃料の燃焼開始から、1年後には20%、2年後には40%、3年後には60%がプルトニウムによる発電の割合になるとされている。

兵器級

プルトニウムは、核兵器にも使われる。ウラン型原爆の場合、高濃縮ウランが22.8kg(235Uが93.5%の場合)必要なのに対し、239Puでは5.6kgで良く、小型軽量な核兵器が製造可能なため、核弾頭は一部を除いてプルトニウムである。

使われるプルトニウムは239Puの純度が高い方がよく、通常は239Puが90%以上のものが使用される。不純物となる240Puの含有量でプルトニウムの品質は区分され、240Puの割合が7%以下を「兵器級」、18%以上を「原子炉級」としている。

軽水炉でも随時239Puすなわち核兵器の材料が作られていることから、これを理由に原子力発電所に反対する者もいる。しかし簡潔に言って、軽水炉のプルトニウムは純度が低すぎ、核兵器用としては使い物にならない。

兵器用にプルトニウムを作る場合、専用にあつらえられた「プルトニウム生産炉」を使う。質量数の大きなプルトニウムが作られないよう速やかにウランを燃やし、90%以上の239Puを得る。

一方の発電用軽水炉は、239Puを作ること自体は主たる目的ではない。燃料棒は最低でも4年間は燃やすが、こうすると240Puや241Puなど、兵器では不純物となるものが多く作られる。最後まで燃やされて取り出された燃料棒の中の239Puは40%〜60%程度しかなく、これは兵器としては実用にならない。

酸化状態

プルトニウムのようにf軌道に電子を持つ原子は、酸化状態が多数ある。

最も安定な酸化数は4価で、他に3価/5価/6価/7価が存在し、状態に応じて色が変化する。

水溶液は、3価が青紫、4価が黄褐色、5価がピンク色、6価が橙色、7価がを呈している。

毒性

傾向と対策

プルトニウムには、放射性物質としての毒性と、重金属として(化学物質として)の毒性とがある。

重金属としての毒性は、他の重金属と大差なく、特別危険というわけではない。放射性物質としては、僅かずつ核分裂して長期にわたりα線を放出し続けるため、次のことが言える。

仮に食品に付着しており、それを口から摂取したとしても、プルトニウムは消化吸収されない。大便として体外に排泄されてしまうため、食品から体内に摂取される可能性はほぼ無い。

プルトニウムについては、粉塵等の吸引のみが問題となる。核燃料(MOX燃料も含む)は陶器のように焼き固めたペレットとして使われており、仮に事故が発生したとしても、粉塵や微粒子として環境に放出されることが無いようになっている。

吸引されたプルトニウムは蓄積されることになるが、ここ近年は大気中への放出量は(福島第一原電事故も含め)少ない。ただ、大気中で核実験をやっていた頃に散々ばら撒かれ、その塵は当然世界中に散っているので、一つ二つ新規の微小な事象が発生したとしても、その影響だけを気にしてもほかの影響が無視できない状態である。


毒性の種類と程度

化学毒性

プルトニウムは重金属なので、大量に摂取すれば他の重金属と同様、腎臓などへの毒性などが想定される。

ただし日常生活において、実際に毒性が出るほどの量に出会うことは無いため、想定するだけ無駄である。

プルトニウムの場合は比放射能(単位質量あたりの放射能の強さ)が非常に強いことから、化学物質としての毒性が出る前に、放射能による影響が懸念される。


急性毒性

どれだけ摂取したら毒性が出るかを表わす指標に「LD50」(半数致死量)がある。摂取して半数が死亡する量を、体重あたりのグラム単位で表わす。

しかし、プルトニウムのLD50を計測しようにも殆ど吸収されないことから、計測は困難である。

ただ一説では、吸入では青酸カリ程度の急性毒性が、経口では食塩程度の急性毒性があると見込まれている。吸入摂取については、厳重に注意するべきである。


放射能毒性

放射線を大量に、あるいは少量でも長期に渡り浴びつづければ、いつかはがんになる。

プルトニウムについても、粉塵等の吸引については、発がんのリスクが想定される。可能性としては、吸引されたプルトニウムが肺に沈着、プルトニウムが出す放射線で被曝し肺組織の遺伝子が損傷しがん化、と推定できる。同様の肺がん化機序を持つものに煙草があり、煙草は空気中にある放射性物質ラジウムを肺に蓄積させ、被曝で肺がんを作ることが知られる。ほぼ同様のことは起こると見込まれる。

しかし、動物実験や人体実験(!)、あるいは核兵器製造工場従業員の被曝者や、原電事故なども含めた現在までの医学および軍事研究によれば、直接プルトニウムを原因とする肺がんは、いまだ一件も確認されていない。

例えば、わが国に落とされた2発の原子爆弾は、アメリカのマンハッタン計画によって生み出された。ここに従事した者たちの多くも被曝したが、42年後の追跡調査の結果では、7人の死亡者は特にプルトニウム沈着量は多くなく、むしろそれより多い人も生存者にはいた。この例では、プルトニウムと肺がんや死亡との因果関係は肯定されなかった。

長崎の原爆ファットマンはプルトニウムが使用されている。この全部が燃えたわけではなく、6kg程度搭載されたプルトニウムの約10%が反応し、残りは拡散、風で運ばれた後に雨によって落下した。これが長崎市西山地区(爆心から3km)付近に集まっているとされる。この周辺の土壌中のプルトニウム含有量は他の約8倍高く、これが判明して20年にわたり健康影響調査がなされたが、特に人体への影響は認められていない。

第二次世界大戦中、軍事目的での人体実験が行なわれた。末期がん患者の志望者18人に、高濃度のクエン酸プルトニウムを静脈注射するというものであった。しかし障害発生はなく、末期がんでありながら長生きした患者もいたとする。この例でも、プルトニウムの毒性は肯定されなかった。

アメリカのコロラド州ゴールデン市にあった核兵器工場「ロッキーフラッツ」で、何度かプルトニウムの火災事故が発生していた。事故後数十年後となる、1987(昭和62)年の報告によれば、事故で2ナノキュリー以上被曝した人で、この年までに死亡したのは67人。その死因は、肺がんは僅か1人に過ぎず、通常よりも低い割合に留まっていた。この例でも、プルトニウムと死亡との因果関係は肯定されなかった。

支那の核兵器工場でも事故は起きている。事故から12年後に1例のみ急性白血病による死亡例があるが、この例ではプルトニウム摂取量が少なく、プルトニウムとの因果関係はないと報告されている。


耳掻き1杯で百万人ががんになる

プルトニウムの毒性として、「耳掻き1杯で百万人ががんになる」といった論がある。これは、1972(昭和47)年にアメリカの学者、アーサー・R・タンプリンとジョン・W・ゴフマンが発表した学説である。

しかしながら、数々の研究や動物実験が行なわれた結果、そのような事実が認められないことが証明されているのは、上述の通りである。

本人らも含め、科学者は誰もこの説を支持していない。

特徴
安全性

適用法令

危険性

有害性

環境影響
発見

1941(昭和16)年頃、アメリカの物理学者、グレン・セオドア・シーボーグ(Glenn Theodore Seaborg)らにより、加速器を用いて作られた。

これは、ウラン238(陽子92+中性子146)に重陽子(陽子1+中性子1)を放射してネプツニウム238(陽子93+中性子145)を生成し、そのβ崩壊物としてプルトニウム238(陽子94+中性子144)が発見されたものである。β崩壊することで、質量数は変わらないまま原子番号が1つ大きくなる。

製法は、238U+p+n → 238Np+2n → 238Pu+β、である。

この発見は軍事機密としてその時は非公開とされ、公表されたのは第二次世界大戦後の1946(昭和21)年だった。

化学名Plutoniumは、1930(昭和5)年に発見された準惑星(当時は第9惑星とされていた)であり太陽系外縁天体である冥王星(Pluto)から名前を取り、名付けられた。この冥王星Plutoの名は、ギリシャ神話の冥界の神プルートーン(Πλου'των(plou'to^n))に由来する。

92番のウランはウラノス(天王星)、93番のネプツニウムはネプチューン(海王星)に由来していたことから、その次のこの元素は冥王星からプルトニウムと付けられたという経緯がある。

主な化合物
前後の元素

123456789101112131415161718
HHe
LiBeBCNOFNe
NaMgAlSiPSClAr
KCaScTiVCrMnFeCoNiCuZnGaGeAsSeBrKr
RbSrYZrNbMoTcRuRhPdAgCdInSnSbTeIXe
CsBa*HfTaWReOsIrPtAuHgTlPbBiPoAtRn
FrRa**RfDbSgBhHsMtDsRgCnNhFlMcLvTsOg
UueUbnUbu
*LaCePrNdPmSmEuGdTbDyHoErTmYbLu
**AcThPaUNpPuAmCmBkCfEsFmMdNoLr

93 ネプツニウム ‐ 94 プルトニウム ‐ 95 アメリシウム

リンク
用語の所属
元素
放射性元素
遷移金属元素
希土類
アクチノイド
超ウラン元素
PU
関連する用語
核分裂
MOX燃料
α崩壊
β崩壊
冥王星

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