NECの開発した8086上位互換プロセッサー。正式名称はμPD70116。1983(昭和58)年発売。
主な特徴に、次のようなものがある。
これらの機構により8086と比較して25%程度の処理速度向上を実現させた。
- V30HL ‐ 内部構造の更なるワイヤードロジック化と高クロック化
- V33 ‐ V30を完全にワイヤードロジック化。但しピン非互換
- V33A ‐ V33の80286非互換部分を修正したもの
- μPD9002 ‐ PC-88VAシリーズ用
コプロセッサーはV30専用のものではなく、Intelの8087を利用する。
V30用のコプロセッサーも計画されていたようだが、需要などの問題から立ち消えになったようである。
1985(昭和60)年発売のPC-9801Uに初めてV30が搭載された。
その後、PC-9800シリーズ主力機であるPC-9801VM/VFなどに採用された。
PC-9800シリーズは、i386の時代になっても命令互換性を確保するためにV30を搭載していた。但し、切り替えはDIPスイッチの操作という面倒なものであった。
古いプロセッサーを搭載し続けるのは価格面などを考慮しても無駄と思えるが、V30独自拡張命令を使用したアプリケーションソフトが少なからず登場したため、このようなことになった。
なお、NECは「独自拡張命令は使わないように」とアナウンスをしていたが、それは結果として無視されたわけである。
V30は8086とピン互換である。
IBM-PC互換機のユーザーは、8086をV30に換装するという改造をよく行なっていたらしい。専門業者も登場した。
Intelのセカンドソースに関する方針転換(原則許可から原則禁止になった)の際、NECはマイクロコードは著作権の保護対象ではなく、よってV30はIntelの知的財産権を侵害していないことを確認するための裁判を起こしている。
- マイクロプログラムに著作権は存在する
- しかし、Intelは著作権表示マークである(C)を記述していない
- よって、Intelはマイクロプログラムに著作権の権利行使をすることはできない
- 結論 ‐ NECはIntelの権利を侵害していない
裁判による結論は以上の通りだが、この訴訟の中でNECは結果としてV30の顧客を失うことになる。
後に、NECとIntelは和解した。和解条件に「NECは今後Intelの互換MPUを開発しない」という条件が加えられたため, NECはパソコン向けMPU市場から事実上の撤退となってしまった。
用語の所属

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