ラプラスの魔

読み:ラプラスのま
外語:Laplace's Demon 英語
品詞:名詞

宇宙に存在するあらゆる事象のあらゆる時での状態を知り、全ての事象を計算により完全に予測する能力を持った悪魔のこと。

目次

数学者であり天文学者であるラプラスは、機械論的自然観を持ち、法則的必然性を信じていたため、「神は無用の仮説」、「偶然とは無知の告白である」などの言葉を残している。

しかし実際には世の中の全ての現象を計測し、またその運動を計算で予測しようとした場合、非常に些細な現象の間で発生する干渉までも考慮しなければならない。このため、ラプラスの魔は全宇宙に存在する全ての塵(どころか原子以下の存在)までも把握し、かつ宇宙全ての存在を経過する時間より早く(1秒後の事象を1秒以内に)計算する能力を持っていることになる。

古典物理学においては、物理現象とは決定論的なものであり、ある時刻における全宇宙の物質(原子)の位置と状態を把握できれば、その時刻以後にこの宇宙で発生するいかなる事象も予測可能となる。つまり、このように超絶的な知覚能力を備えた知的存在がもし居るのならば、その者にとって、この世界の出来事はすべて予想の範囲内に収まってしまう。このような知的存在を想像し、「確率の解析的理論」(1812(文化9)年) という書物の中で述べたのがラプラスである。

以後、このような知的存在の事を、彼の名にちなんで「ラプラスの魔」または「ラプラスの魔物」と呼んでいる。

量子論誕生以前は、全ての物理的運動はニュートン力学で説明が付くと考えられて来た。しかしだとすると、ボールは投げた瞬間に落下位置は決定しているのか?、サイコロも投げた瞬間に出る目が決まっているのか?、といった難しい問題が出て来る。

そしてラプラスは、「宇宙の全ての物質の全ての状態を知りうる知的存在が宇宙にあれば、それは未来の全てを予言できる。つまり未来は決まっている」として、知的存在「ラプラスの魔」を予言したわけである。

しかし、量子論の誕生によって、この考え方は正しくないことが明らかとなった。

ラプラスの魔は、全ての事象を計算で法則化しうるとした古典物理学を象徴する存在で、未知の存在を確率で示す量子力学にとって揶揄する対象として扱われる。

「些細な事象が未来の出来事に対して影響を与える」という題材はタイムパラドックスとしてSFでは有名な題材の一つであり、その中で全ての相互干渉を把握しあらゆる未来を予見し、またその未来を操る存在としてラプラスの魔を扱う作品もいくつか見受けられる。

関連する用語
Pierre-Simon Laplace
古典物理学
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