APNG

Mozilla Firefoxの開発をしているMozilla Corporationによって提案された。以降長くFirefoxの独自機能だったが、2017(平成29)年頃に主要なWebブラウザーが対応を開始し、一気に普及した。

APNGは従来のPNGにチャンクを追加することで複数の静止画像を格納し、これを動画GIFと同様に表示することで動画とする。

基本的な技術は動画GIFのPNG版と言えるもので、非常に簡易な仕様となっており、ローテクの範疇である。同様にPNGを拡張して動画にするMNGとは似てはいるが別物である。

• MIMEタイプ名: image/vnd.mozilla.apng
• 拡張子: .apng、.png

PNGの持つ全ての利点に、更に動画GIFの利点を加えた。次のような特徴がある。

• フルカラーに対応する
• アルファチャンネルに対応する
• (GIFにある)フレームごとのパレット機能は無く、全フレーム共通のグローバルパレットを使う
• (MNGにある)一つのフレームを多様に使えないので、ファイルサイズ面では不利である

本格的な動画には向かないが、動画GIFと同様にパラパラまんがのようなものの表現には適している。換言すれば、動画GIFという時代遅れの技術の代替として本来最初に作られるべき仕様がAPNGだったと言える。実際に登場したのはMNGという需要からかけ離れたものだったため、APNGが普及するまで長く動画GIFという時代遅れの技術が使われることになった。

従来のPNG実装との互換性が重視されている。上位互換といっても問題ないと思われるが、Mozillaは後方互換としている。

詳細な技術は後述するが、PNGと同様の画像(デフォルト画像)の他に、拡張されたチャンクに動画用の画像が納される。このため、APNGに対応していない従来の実装(PNGデコーダー)では動画用の画像は全て無視され、デフォルト画像のみを静止画として表示する。従来の実装でも誤動作しないよう設計されている。

なお、APNGでは動画GIFと同様にデフォルト画像を動画の1フレーム目にすることも、逆にしないこともできる。

PNGに対し、APNGで追加されたチャンクは次の3種類である。

• acTL ‐ APNGと識別するための情報。IDATチャンク(画像情報)の前に置く必要がある。APNGのフレーム数と、ループ回数が書かれる。ループ回数0の場合は無限ループである
• fcTL ‐ フレーム制御情報。fdATチャンクの前に必須である。デフォルト画像をアニメーションに含める場合はIDATチャンクの前にも置く必要がある
• fdAT ‐ 以降のフレームを格納するチャンク。シーケンス番号から始まっていること以外は 'IDAT' と同様の構造である

この3つのチャンクを追加することによって、アニメーションのフレームデータを格納することができるほかは、PNGと全く同じ仕様である。

アニメーション全体の境界はIHDRチャンクの幅と高さで決定される。デフォルト画像がアニメーションに含まれているかどうかは無関係である。デフォルト画像以降のフレームで描画しない範囲がある場合は、完全な透明色で適切にパディングするべきである。

PNGグループは、静止画がPNG、動画がMNGという姿勢を崩していない。自ら策定した失敗作(MNG)を失敗作と認めたくないがため、APNGについては「賛成8、反対10」で否決し、公式には不採用と決定した。

しかし、MNGが失敗作ということは紛れもない事実であり、実際に殆ど普及していない。APNG相当の性能をもつサブセット仕様としてMNG-VLCはあるが、対応する主要なWebブラウザーは一つもない。

世界が渇望し選択したのはMNGではなくAPNGだった。

アニメーションPNGは徐々に普及している。

主要なWebブラウザーでは、以下のソフトウェアが標準対応している。対応バージョンとリリース日を以下に記す。

• Mozilla Firefox 3.0以降 (2008(平成20)年6月17日)
• Safari 8以降 (2014(平成26)年10月16日)
• Chromium (2017(平成29)年3月15日 東部夏時間)
  • Google Chrome 59以降 (2017(平成29)年6月5日)
  • Opera 46以降 (2017(平成29)年6月22日)
• Microsoft Edge 79以降 (2020(令和2)年1月15日)

Operaは9.5以降12までAPNGに対応していたが、15以降にレンダリングエンジン変更にともなってサポートが停止していた。ChromiumへのAPNG対応マージにより、遅ればせながら46以降で再対応している。

Google Chromeも対応が遅れたが、APNGに対応する拡張機能などを使うことで対応できていた。公式対応は59以降である。

Microsoft Edgeは更に対応が遅れたが、79以降でようやく対応し、これをもって主要ブラウザーは全てがAPNGに対応した。

APNGを作成するソフトウェアは様々なものが存在する。

複数のPNGやJPGなどをAPNGにまとめるものや、動画GIFから変換するものなど、提供される機能も多様である。