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直流給電

辞書:科学用語の基礎知識 電力編 (NPOW)
読み:ちょくりゅうきゅうでん
外語:Direct Current Power Supply 英語
品詞:名詞
2011/06/15 作成
2014/08/27 更新

電器製品への電力供給を、直流にて行なうこと。ACアダプターなどを介するのではなく、屋内配線を含めて直流化することを意味する。

現在、家庭に供給される電力交流である。日本ならAC100Vである。しかし、家庭内で用いる電器製品の殆どは、内部では直流で動作している。

交流で動作する機械、たとえば洗濯機やエアコンなども、内部にはインバーターが搭載されており、交流を一旦直流に換え、その後高周波の交流にして機械を動かしている。これにより50/60Hz共用も実現した。コストは上がるが、直流モーターなどを使えば本当に直流だけで動かすことも不可能ではない。CEATEC JAPAN 2008では、TDKが「交流でないと動かないのは蛍光灯くらい」とするほど、家庭内の機器は直流が主流であり、直流給電という話が出てくることは当然の成り行きである。

蛍光灯だけは機構上交流でなければ決して動かないが、インバーターを使って交流を作れば給電自体は直流でも動作する(例えば直流1500Vが給電されている都心部の電車内の蛍光灯)。実際に現在市販されている蛍光灯器具の殆どはインバーターが使われていると考えられ、交流から一旦直流を作り、それを再び交流にしている。また、今後の普及が期待されるLED蛍光灯は、そのまま直流で動く。給電がすべて直流化しても、困ることは殆どない。

交流と直流の変換では必ず電力ロスが発生するが、この回数を減らすことでロスを低減し、効率を上げることを目的として取り組まれているのが、直流給電である。

欠点

利点が多い直流給電だが、解決不可能な欠点もいくつか存在する。

  • 電圧変更(昇圧・降圧)が難しい
  • 電流の開閉(遮断)が困難で、開閉でアークが発生する

電圧変更

交流はトランスを使えば電圧変更が簡単だが、直流は、直流のまま電圧を変えることができない。

家電クラスの低電圧ではDC-DCコンバーターという変換器を使うが、内部では一旦高周波の交流に変換して電圧を変え、整流して直流を出力している。

高電圧ないし大電流の場合は、それなりの大型の装置が必要となりコスト面に問題があることと、やはり一旦交流に変えることから、これがノイズ源になるという問題がある。

電流の開閉とアーク

交流は電圧が常に変わり、定期的に0Vになる瞬間がある。このため、この時を狙えば容易に電流の開閉(遮断)が出来る利点があり、扱いやすい。

対して直流の場合は電圧が常に一定で0Vになる瞬間が無いことから、電流の開閉(遮断)が難しいという欠点がある。

高電圧・大電流の場合はもちろんのことながら、家電向けに普及が見込まれているDC48V程度でもコンセントの抜き差しで火花(アーク)が発生してしまう。このため各社、外からアークが見えにくいようなカバーのついたプラグを提案している。「見なかったことにする」以外には解決方法がないということになる。

データセンターの例

現在、大々的に直流給電を受け入れ、利用されているのが、インターネットデータセンター(iDC)である。

サーバーパーソナルコンピューターで、AC100Vを受け入れる。ただ、その前には瞬間停電を避けるため、必ずUPSが導入されている。UPSは直流で充電し、交流を出力するので、従来は次のような構造になっていた。

AC100V → [UPS (AC→DC→AC)] → AC100V → [サーバー (AC→DC)]

つまり、AC-DC変換、DC-AC変換、AC-DC変換、と三回も変換をすることになっている。各変換効率が90%だとしても、3回すれば73%にまで落ち込む計算で、27%の損失になる。

最初からDCで給電すれば変換が一回少なく済み、無駄な電力消費が1〜2割程度削減できる。

DC → [UPS (DC→AC)] → AC100V → [サーバー (AC→DC)]

UPSとサーバー間の接続もDC化したDCサーバーシステムであれば途中に交流を介する必要自体がなくなる。

DC → [UPS] → DC → [サーバー]

この理由により、現在のiDCでは直流供給がサービスされるのが一般化している。電圧は、DC12VDC48V程度が一般的のようである。

Googleの例

おそらく世界最大のデータベースを持ち稼働させている企業がGoogleである。

使用するコンピューターはパーソナルコンピューターだが、Googleのサーバーの場合、特注品であり、給電電圧はDC12Vのみで稼働するものが使われている。

CPUにしろ他のプロセッサーにしろ、実際にはより低い電圧で動作するが、内部で必要な電圧を作ることが可能であり、従って入力自体は12Vでも問題はない。

コンピューターは大きな電力を消費するので入力電圧が低すぎると大きな電流が流れることになり良くなく、電圧が高すぎてもよくない。バランスから、GoogleはDC12Vが最良であるとしている。

家庭向け

シャープやTDK、あるいはパナソニック(三洋電機含む)などが、太陽電池と蓄電池を組み合わせ、直流で給電するための取り組みを進めている。

電圧とコンセントの統一が最低限必要になるが、これはまだ規格が定まっていない。直流コンセントについては、TDK、パナソニックなど、複数の企業により、開発成果がCEATEC JAPANなどで展示されている。

特に良くできているパナソニックのものは、パナソニック電工の発明品が特許申請されている

従来通り、顔に似た造形で受け入れられやすそうなデザインのこの特許では、アークが見えることを防ぐため周壁が設けられたプラグが使われる。プラグは周壁と2本(接地極付きは3本)のピンからなるオスで、壁側は周壁とピンが差し込まれるメスになっている。壁側は基本的に角の丸い四角だが、供給電圧に応じて四隅に傾斜部を形成するようになっている。6Vは右下、12Vは左下、48Vは左右両方の下に傾斜部があり、24Vには傾斜部がない。

また、SELV用は絶縁構造が簡略化されているため、ELV用とSELV用の区別も用意される。SELV用コンセントの周壁挿入溝の下中央に突起(延長溝部)が設けられ、ELV用プラグはSELV用コンセントに挿入可能だが、SELV用プラグはELV用コンセントに挿入できないようになっている。

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