ITRON

読み:アイトロン
外語:ITRON: Industrial TRON 英語
品詞:固有名詞

TRON仕様のオペレーティングシステムのうち、機械制御用のもの。

目次

一般に、ファームウェアと呼ばれるソフトウェアの世界(産業機器)にオペレーティングシステム(OS)を提供することを主たる目的としている。

ITRONが想定するよりも小型の機器向けには、ITRONのサブセットとしてμITRONが作られた。以降、ITRONよりもμITRONの方が普及したため、μITRON3.0以降ではITRONがμITRONに統合され、現在に至っている。

また、Sun Microsystemsにより開発されたJava言語を用いたJTRONなども作られている。

沿革

トロン協会から仕様が公開された沿革は以下の通り。

  • 1987(昭和62)年: ITRON1
  • 1989(平成元)年: ITRON2、μITRON2
  • 1993(平成5)年: μITRON3.0
  • 1999(平成11)年: μITRON4.0
  • 2002(平成14)年: μITRON4.0/PX

カーネル

ITRONは「仕様」の名であり、特定の製品を表わすものではない。Linuxに対するLinuxカーネルように、ITRONカーネルといったようなものが提供されているわけではない。

公開されたITRON仕様に準拠するよう、おのおのにより実装されたオペレーティングシステムがITRON仕様カーネルである。カーネルは、半導体メーカーやOSメーカーなどから製品として出荷されており、確認されているだけでも数十種類がある。

仕様公開

ITRONはトロン協会により規定された仕様で、その内容は広く公開されている。

ITRONは「ゆるい標準化」を標榜し、あまり厳密な規定をしないことでカーネルを作りやすいように配慮した。このため様々なITRON仕様カーネルが存在するが、一方で、ITRON仕様カーネル間での互換性問題が生じた。

TRONはあくまで「仕様」を提供するものなので、実装方法は実装者に委ねられていた。従って実装によって仕様差が大きい、つまり同じ事をするにしても実装によって方法がまちまちとなる。

μITRON4.0からは「プロファイル」の概念を規定し、少し強い標準化をすることで互換性問題に対応することになった。

またソフトウェアの大規模化に対応するため、2002(平成14)年には、μITRON4.0仕様の拡張として、メモリー保護機能に対応したμITRON4.0/PX仕様が公開された。

実装

μITRONはあくまで「仕様」なので、この仕様に準拠した製品がある。知られる範囲では、次のようなものがある。

  • T-Kernel: T-Engineプロジェクトの標準OS。μITRON系
  • eCos: Cygnusが開発し、現在はRed Hatが提供するリアルタイムOS
  • eCROS
    • eT-Kernel (T-Kernelベース)
    • PrKERNELv4 (μITRON4.0準拠OS)
  • Hyper Operating System: フリーで開発されている組み込み向けOS

μITRON4.0の仕様書の時点で、トロン協会には、約35種類のプロセッサー向けに約50種類の製品が登録されているとされる。

利用例

日本において広く普及している。実際の利用例として、次のようなものが知られる。

  • 携帯電話機
  • 乗用車
    • トヨタ自動車の乗用車「プラド」のエンジン制御システム
    • デンソーのカーナビ (全機種)
    • ボッシュのカーナビ (多くの機種、イーソル(eSOL)のT-KernelベースOS)
  • 人工衛星や探査機など
    • 小惑星探査機「はやぶさ」、探査ロボ「ミネルバ」(μITRON3.0)
    • 赤外線天文衛星「あかり
    • X線天文衛星「すざく
    • 月周回衛星「かぐや
    • 金星探査機「あかつき」 (eCROSを採用)
    • 小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」 (eT-Kernelを採用)

伝説の不死鳥「はやぶさ」はじめ旧ISAS系の衛星の多くで使われている他に、カーオーディオ装置など様々な機器で広く使われている。

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