ABO式血液型

読み:エイビーオウしきけつえきがた
品詞:名詞

血液型分類法の一つ。赤血球の血液型。赤血球の表面上の抗原性の違いによって、A型B型AB型O型に区別される。

目次

1900(明治33)年、オーストリー出身の医学者カール・ラントシュタイナー(Karl Landsteiner)により発見された。

論文 "Ueber Agglutinationserscheinungen normalen menschlichen Blutes"(正常ヒト血液の凝集現象について)は翌年の1901(明治34)年11月14日に発表されている。

日本人の血液型比率は、およそA∶O∶B∶AB=4∶3∶2∶1である。但し、世界的にはO型が一番多い。

赤血球抗原血清抗体日本支那
O型なし抗A・抗B抗体30%35%46%47%41%
A型A抗原抗B抗体38%27%40%42%45%
B型B抗原抗A抗体20%26%10%8%10%
AB型A抗原・B抗原なし10%12%4%3%4%

比率については時期等により変化するため、この数値は参考とするべきである。

本当の親子でも、ABO式血液型が合わないことは良くある。

アメリカのみならず、日本でも、不倫相手の子なのではないかと訴訟にまで発展したケースはあるが、例えば両親がA型だからといって子供が常にA型とは限らない。

突然変異や、特殊な血液型(後述)などの例外、または「誤判定」を除けば、父親・母親と子供のABO式血液型の組み合わせは、次のようになる。以下の何れかであれば、親子関係は肯定も否定もできない。

 父親の血液型
ABOAB
母親の血液型AA、OA、B、O、ABA、OA、B、AB
BA、B、O、ABB、OB、OA、B、AB
OA、OB、OOA、B
ABA、B、ABA、B、ABA、BA、B、AB

このようになる理由は、ABO式血液型には「表現型」と「遺伝型」というものがあり、通常用いる1文字の表現型では表現しきれない特徴がABO式には存在するからである(詳細は後述)。

また誤判定となる理由も、決して医者が手抜きをしているわけではなく、血液型は必ずしもA、B、O、ABなどという4種類には単純化できないことによる。亜型(後述する)と呼ばれるものは、検査から漏れ、異なる血液型に判定される可能性があるのである。

糖鎖

赤血球には多数の糖鎖があり、そこに「A抗原」「B抗原」と呼ばれる糖があり、これによって型が決定される。

A型の赤血球上にはA抗原が、B型ではB抗原が、AB型ではA抗原とB抗原の双方が存在し、O型の赤血球にはA抗原・B抗原共に存在していない。

血球膜〜糖鎖〜H抗原〜抗原
血球膜〜糖鎖〜H抗原〜抗原

抗体

ABO式血液型の特異な特徴は、自分の赤血球とは反応しない抗体(規則抗体)を血液中に常に持つことである。

A型の人は「抗B抗体」、B型の人は「抗A抗体」、O型の人は「抗A抗体」と「抗B抗体」の両方を持つため、異なる血液型の血液を混ぜると固まってしまう。なお、AB型の人は「抗A抗体」も「抗B抗体」も持たない。

なぜ特異な特徴かというと、通常の免疫では、抗原が体内に侵入したときに抗体が作られる。しかし抗A抗体/抗B抗体の場合、「体内にない抗原に対する抗体が作られる」ことであり、免疫学的に見ても非常に不思議な現象である。

ないものに対する抗原など作りようがないはずだが、どうやら腸内細菌にA型抗原やB型抗原に似た成分を持つものがあり、生後3〜6ヶ月程度するとこれを基に自分の持たない抗原に対するIgM型の抗体が作られるようである。

亜型

なお、A型やB型と一言で言っても、それには多くの亜型(バリエーション)があることが知られる。

具体的には、赤血球上にA型抗原はあっても、その量が少なかったり、あるいは通常とは形状が異なっていたりするものがあり、それらを総じて亜型という。

亜型は通常の血液型検査では血液型がはっきりと分からなかったり、あるいはオモテ検査(赤血球上の抗体検査)とウラ検査(血漿中の抗体検査)の結果が一致しないことがある。

輸血

昔はO型の血液はA型・B型の人に輸血できる、などと言われていたが、血清抗体の発見により、現在これは否定されている。

また同様に昔はAB型の人はAB型だけでなくA/B/O型全ての人から輸血を受けられるとされていたが、現在ではこのような輸血は行なわないことが前提となっている。

検査内容

ABO式血液型を正確に判定するためには、「赤血球にある抗原」と、「血漿中にある抗体」の双方を調べる必要がある。

つまり二種類の試験がありオモテとウラと呼ばれていて、この双方が一致した場合にABO式血液型は確定する。

  • オモテ試験 ‐ 検査対象は赤血球、試薬は抗血清を使用
  • ウラ試験 ‐ 検査対象は血清、試薬は血液型の判明している赤血球

簡易な検査ではオモテ試験のみ行なうが、きちんとした検査ではオモテとウラ双方を実施する。

検査方法に間違いが無いにもかかわらずオモテとウラが一致しない場合、亜型の可能性を考慮して原因を調べる必要がある。

なお、ウラ試験の対象である血清中の抗体は生後3〜6ヶ月頃にならないと作られないほか、新生児は母親から移行した抗体が残存するため、産まれてすぐには正確な結果がでない。オモテとウラが一致するようになるのは個人差もあるが生後1歳程度からとされているため、通常は生後1歳未満の乳幼児に対してはウラ試験を実施しない。

オモテ試験

被験者の赤血球にA型とB型の抗血清を加え、凝集するかどうかで判断する。

+が凝集、−が凝集なしとすると、次のようになる。

  • A型抗血清 + 、B型抗血清 − → A型
  • A型抗血清 − 、B型抗血清 + → B型
  • A型抗血清 + 、B型抗血清 + → AB型
  • A型抗血清 − 、B型抗血清 − → O型

なお、A型抗血清は青色、B型抗血清は黄色と決まっている。

ウラ試験

ウラ試験は血液型に対する抗体の型を見るため、つまり赤血球の血液型とは逆の反応が検出される。ゆえに「ウラ」と呼ばれるようである。

検査には「A1血球」「B血球」「O血球」が使われる。「O血球」は通常は凝集することがなく、もし凝集する場合は検査ミスであるか、何らかの特殊な型であることが疑われる。

  • A1血球 − 、B血球 + → A型
  • A1血球 + 、B血球 − → B型
  • A1血球 − 、B血球 − → AB型
  • A1血球 + 、B血球 + → O型

法則

血液型はメンデルの法則に従って遺伝する。それは即ち父と母の性質を受け継ぐということである。

DNAは対になっていて、遺伝で用いられる細胞減数分裂によって片方のDNAのみが使われる。親がAB型とOO型であるなら、片方ずつの組み合わせにより、通常、子はAO型またはBO型となり、両親がAO型であれば、同様に通常、子はAA型、AO型、OO型のいずれかとなる。

シスAB型

ごく希に、一つの染色体上にAとBの両方(に近い)の遺伝子が乗る場合がある。

このため、AB×OからAB型が生まれることがある。このような血液型はシスAB型と言われる。

遺伝型

人間のABO型の血液型を決める遺伝子は9番染色体に記録されており、ここにA、B、Oの3種類の遺伝子がある。

AとBは優劣がなく、A/Bは共にOに対して優性なので、結果的にAA・AO→A型、BB・BO→B型、AB→AB型、OO→O型となる。2文字で表記するのを遺伝型、1文字で書くのを表現型という(但しAB型を除く)。

なお、糖(A抗原・B抗原)が接続するH抗原は19番染色体に記録されている。

血液型の歴史

人間における血液型は、当初はA型のみであった。その起源は数百万年前、ヒトとサルの分岐以前にまで遡ると考えられている。

後にA型から遺伝子欠損による突然変異でO型が産まれ、更にその後、A型からB型が産まれた。

塩基配列

A遺伝子やB遺伝子は共に354個のアミノ酸からなる転移酵素をコードしている。

A遺伝子とB遺伝子はコドンの176、235、266、268番目が異なっており、その結果4個のアミノ酸がそれぞれの転移酵素で異なる。

その一方、O遺伝子のcDNAの塩基配列はA遺伝子と類似するが、88番目のコドンのG塩基が欠失しているためフレームシフト突然変異となり、全く異なるアミノ酸配列による別の蛋白質が産生される。この蛋白質には転移酵素の活性はない。よってH抗原に糖が付加されないためO型となる。

また更に、O遺伝子のcDNAの塩基配列の研究が進んだ現在、B遺伝子と類似のcDNA配列や、特異的なG塩基の欠失を伴わないO遺伝子も発見された。

用語の所属
血液型
関連する血液型
A型
B型
O型
AB型
シスAB型
ボンベイ型
関連する用語
Rh式血液型
稀血
血液
赤血球

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