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温泉

辞書:国土用語の基礎知識 地理用語編 (EGY)
読み:おんせん
外語:hot spring 英語 , spa 英語 , varm/a font/o エスペラント
品詞:名詞
2002/10/17 作成
2016/02/20 更新

一般的には、熱せられた地下水がわき出したもの、及びその場所。また、それを利用した施設(浴場)などがある場所のこと。

地中から湯が沸き出す場所や、その現象などを総じて温泉という。また、その湯を用いた施設も温泉と呼ぶ。

温泉は地下の様々な熱源により水が温められ、それが湧出するものであるが、後述するように日本の法律上の定義では必ずしも温水である必要が無く、ここから「狭義の温泉(本物の温泉)」と「広義の温泉(法的な温泉)」とに呼び分けられるようになった。

法定義

日本人は温泉が好きであるようで、それを証明するかのように日本には世界的にも珍しい「温泉法」という法律がある。

この法律では、温泉は次のように定義されている。

地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、25℃以上であるか、または法で規定する特定の物質が少なくとも一種類、特定量以上含まれるもの(要約)

つまり条件さえ整えば、「熱せられていなくても温泉」である。一般的な解釈と温泉法の定義は違う。

狭義の温泉は涌きだした時点からお湯だが、法的な温泉はそうではないためボイラーで涌かしても良い。

銭湯の屋号

水道水を沸かした、いわゆる銭湯の屋号として「○○温泉」と称するものも少なからずある。

実際に温泉法に基づいた温泉水を用いていなくても、屋号に温泉を用いる法規制がないことから、今もこのようなことがまかり通っている。

温泉の分類

環境庁鉱泉分析法指針では、「源泉温度(泉温)」、「pH値」、「溶存物質総量」、「泉質」によって様々に分類される。

温度

温度による分類は、次の通り。

  • 25℃未満: 冷鉱泉
  • 25℃以上34℃未満: 低温泉
  • 34℃以上42℃未満: 温泉
  • 42℃以上: 高温泉

pH

pHによる分類は、次の通り。

  • ph2未満: 強酸性泉
  • ph2以上3未満: 酸性泉
  • ph3以上6未満: 弱酸性泉
  • ph6以上7.5未満: 中性泉
  • ph7.5以上8.5未満: 弱アルカリ性泉
  • ph8.5以上: アルカリ性泉

また俗に、ph10以上の温泉を強アルカリ性泉と呼ぶこともある。

泉質

泉質に関しては環境庁鉱泉分析法指針で規定されるが、1970(昭和45)年に大幅な改正があり、都合、新旧二種類の表示が現在混在している。

現在の掲示用泉質名は、次のようになる。

また更に泉質名として「ナトリウム‐塩化物‐硫酸塩・炭酸水素塩泉」のように、含有イオンに応じた名前が付けられる。

温泉の要素

温泉は、様々な特徴を持っているが、それらは人間の様々な感覚を刺激し、リラックスの効果を与える。

古典的な人間の感覚分類に五感というものがある。現在ではより多くの感覚が知られてはいるが人間の感覚の基本とも言えるこれらを、温泉は有意に刺激する。

五感の視覚は温泉の色、聴覚は流れる温泉の音、触覚は肌触り、味覚は温泉の風味、嗅覚は温泉の香りで刺激され、もってリラックス効果があるものと期待される。

温泉の色

色調

元々の水は無色透明であるが、温泉の湯の色は多様である。

この色は、「温泉に溶け込んだ成分」のほか、温泉に射し込む光の元となる「周辺景色の色」など様々な要素によるものである。また同じ温泉でも、日によって色が変わることも珍しくはない。

温泉が源泉より湧出したばかりの頃は無色透明でも、太陽光や空気に触れることで変質し、色が変わるものもある。日により温泉中の成分や日照量などが異なるため、その色は日ごと時間ごとに様々となる。

実際によく見られる温泉の色は次の通りである。

乳白色の温泉

長野信州白骨温泉などに代表される白いお湯の温泉は、火山地帯に多い。関東では群馬県や群馬県など山地の温泉によく見られ、ほか全国各地に存在する。

一般に、この温泉は地中より湧き出してすぐは無色透明である。これが空気に触れることで、乳白色に変化する。

この種の温泉は硫化水素を含む硫黄泉であり、硫化水素が空気中の酸素に触れると酸化して硫黄が生成されるためである。

2H2S + O2 → 2S↓ + 2H2O

硫黄は水に溶けにくいため水中でコロイドを形成し、この微粒子によるミー散乱で可視光が散乱されることにより白色に見える。

青色の温泉

大分県の湯布院温泉(由布院温泉)や別府温泉などごく一部の温泉に見られるのが、青い色の温泉である。主として大分県だが、和歌山県の湯の峰温泉 つぼ湯や、秋田県の乳頭温泉 孫六温泉なども青色を呈している。

ここも火山帯であり、また温泉も地中より湧き出してすぐは無色透明である。これが湧出後、まず薄いコバルトブルーとなり、数日中にが濃くなり、一週間後頃には乳白色へと変化する。青と乳白色が混ざり、乳青色という不思議な色合いを醸し出す濁り湯が特徴となる。

この種の温泉は温泉中に珪酸が多く含まれている。珪酸塩が水中で脱水縮合を繰り返し粒子が徐々に大型化するにつれ、最初は太陽光の中の波長の短い青色光のみを散乱するレイリー散乱を起こし、もって青色に見えるようになる。粒子が更に大きくなると、全ての可視光を散乱するミー散乱によって白色に見えるようになる。

青色の温泉は特殊だが、温泉法では珪酸を特殊扱いしていないため、これらの温泉の泉質は通常は塩化物泉などに分類される。

茶色の温泉

薄茶色(金色)から茶褐色まで、茶色の温泉は全国に多数存在する。

この種の温泉は一般に塩化物泉であるが、塩化物泉はを含むことが多い。

温泉が地中より湧き出してすぐは無色透明だが、この鉄分が空気中の酸素に触れると酸化して酸化鉄となり、茶色い析出物となる。この析出物によって茶色い懸濁液となったものが、茶色の温泉である。

黒色の温泉

黒色の温泉は幾つか原因があり、フミン酸(腐植酸)によるものと、鉄分を含む硫黄泉によるものとがある。

太古の海底に生息していた海藻などが含まれる地層から採取される温泉水は、その植物が微生物に分解されて作られたフミン酸(腐植酸)が含まれている。フミン酸は可視光を吸収することから、黒く見える。

東京湾周辺の温泉では、太古の海藻由来の黒い温泉が多くある。都内だけでなく、スーパー銭湯のチェーン店 極楽湯の横浜芹が谷店(神奈川県)や和光店(埼玉県)なども湯色が黒である。

北海道の十勝川温泉なども同様だが、こちらは「モール泉」と称している。モールはドイツ語で泥炭土などを意味するMoorが語源とされている。

また鉄分を含む硫黄泉では、温泉中の硫化水素が鉄分と反応して硫化鉄を析出させる。これは「湯の華」などになるが、これが温泉中に懸濁すると黒いお湯となる。栃木県の塩原温泉ではこれを「墨の湯」と称している。

緑色の温泉

お湯自体は無色透明であるが、浴槽にお湯が張られるとこれが緑色に見える、などの例がある。

岩手県の国見温泉、長野県の熊の湯温泉などが、緑色の秘湯として知られる。

温泉の泉質としては、多硫化物イオンや炭酸カルシウムなどを含む硫黄泉である。多硫化物イオンは黄色を呈するが、この硫黄粒子や炭酸カルシウムによるレイリー散乱で青色光が散乱され、黄色と混色して緑色に見える。国見温泉は飲用可能な温泉だが、苦味があり、「驚きの不味さ」と評判である。

また特殊な例として、岐阜県の焼岳温泉には、天然のクロレラを含む「うぐいすの湯」と呼ばれる温泉があり、日光を浴びつつ成長するそのクロレラによって湯は緑色を呈している。地下深くには光が届かないため光合成する藻類は存在しないことから、湧出後に増殖したことが分かる。秘湯中の秘湯である。

沈殿物

湯の華

地下深くと地上とでは環境が全く異なる。地下は高温高圧に加えて、酸素が少ない還元的な環境となっているが、地上に出ると圧力温度が低下し、二酸化炭素の放出やpHの変化、また空気中の酸素と結合することで水中の成分の酸化が進み、沈殿物などが析出する。

こういった沈殿物を総じて「湯の華」(または湯の花)という。

地下水(温泉水)に含まれる成分は様々あるが、それらによって、石灰華、硫黄華、珪華、硫酸塩華、鉄華(褐鉄華)などに分類される。

石灰華

炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とする温泉沈殿物を石灰華という。白色。

地下水(温泉水)ではありふれた成分で、鍾乳洞などを作るのはこの炭酸カルシウムである。

カルシウムイオン(Ca2+)と、炭酸イオン(CO32−)また炭酸水素イオン(HCO3)が含まれていると、地上に湧出した際に二酸化炭素(CO2)を放出し、炭酸カルシウムの沈殿が生じる。

Ca2+ + CO32− ⇄ CaCO3

Ca2+ + 2HCO3 ⇄ CaCO3↓ + H2O + CO2

硫黄華

硫黄を主成分とする温泉沈殿物を硫黄華という。黄色

群馬県の万座温泉や草津温泉など、火山近くの温泉でよく見られる。このような温泉は、硫化水素を多く含む硫黄泉(硫化水素型)であり、湧出後に水中の硫化水素が空気中の酸素で酸化され、固体の硫黄の沈殿が生じる。

2H2S + O2 → 2H2O + 2S↓

珪華

珪酸、なかでもメタ珪酸(H2SiO3)を主成分とする温泉沈殿物を珪華という。

花崗岩に含まれる石英(二酸化珪素)や雲母(珪酸塩鉱物)などが高温の地下水(熱水)の作用で融解し、地上に湧出するさいに急速に冷やされて珪華として析出する。従って珪華は高温泉に多い。

この種の温泉では、オパールなどの鉱物が産出される。

硫酸塩華

硫酸カルシウム(石膏)、硫酸ナトリウム(芒硝)、硫酸バリウム(重晶石)、硫酸鉛などの硫酸塩を主成分とする温泉沈殿物を硫酸塩華という。

このような温泉は硫酸塩泉と呼ばれるが、硫酸アルミニウムカリウム(明礬)を主成分とする場合は含アルミニウム泉とされる。

硫酸バリウムにラジウムを含む放射能泉として台湾の北投温泉と秋田県の玉川温泉が知られ、ここでは北投石と呼ばれる重晶石が発掘される。日本では特別天然記念物であり採掘が禁止されているが、石に放射能があるため「がん」に効くなどとして盗掘が相次いでいるという。

鉄華

を主成分とする温泉沈殿物を鉄華または褐鉄華という。

含鉄泉のほか、塩化物泉が鉄を含むことが多く、こういった温泉では含まれる鉄が空気中の酸素で酸化され、酸化鉄として析出する。

関連する用語
掲示用泉質名
温泉マーク

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