国際単位系

読み:こくさいたんいけい
外語:SI: Le Système International d'Unités フランス語
品詞:名詞

メートルに代表される、単位系の国際規約のこと。通称は「SI」。

目次

黎明期

1875(明治8)年にメートルに関する国際条約(メートル条約)が締結され、世界的にメートル法での採用の統一が図られた。日本も含め世界各国がこれを採用した。

しかし技術が進むにつれ、長さ=メートル以外の単位系の統一も必要となった。少なくとも、長さに加えて重さも標準が無ければ、日常でさえ困ることは容易に推測できる。

国際単位系

そこで当時、メートル法としてCGS系やMKS系などが混在していたものも含め、これを更に合理的なものに整理するという目的でSIという単位系が開発され、1960(昭和35)年に第11回国際度量衡総会(CGPM)で採択されて以来、国際的に使用が推奨されている。

1973(昭和48)年にISO 1000が制定され、日本でも1974(昭和49)年にJIS Z 8203:1974「国際単位系(SI)及びその使い方」が制定された。

SI以前の単位系との差

かつて使われた、長さ・重量・時間の基本単位にcm・g・sを用いる単位系をcgs単位系という。

一方で、m・kg・sを用いる単位系をMKS単位系と呼び、MKSに電流(A)を加えたものをMKSA単位系と呼ぶ。

国際単位系はMKSA単位系を発展させたもので、MKSA単位系から作ることができない温度(K)、物質量(mol)、光度(cd)、角度(rad)、立体角(sr)を追加して拡張したものが基本となっている。

沿革

  • 1875(明治8)年: メートルに関する国際条約締結
  • 1960(昭和35)年: SIが第11回国際度量衡総会(CGPM)で採択
  • 1973(昭和48)年: ISO 1000が制定される
  • 1974(昭和49)年: JIS Z 8203:1974「国際単位系(SI)及びその使い方」が制定される
  • 2019(令和元)年: キログラム、アンペア、ケルビン、モルの定義が大変更され、ついにキログラム原器依存が廃止される

定数

SIでは、次の7つの定数を定義することによって、SI単位を定義する。それまで、観測から求められる誤差を含んだ定義がなされていたものも含め、それを無視して定数として再定義することで、組み合わせと計算のみで基本単位を定義することができるようになった。

SI第9版の表1では次のように定義する。

定数 
記号定義値単位
セシウムの超微細遷移周波数ΔνCs9192631770Hz
真空中の光速度c299792458m·s−1
プランク定数h6.62607015×10−34J·s
電気素量e1.602176634×10−19C
ボルツマン定数k1.380649×10−23J·K−1
アボガドロ定数NA6.02214076×1023mol−1
発光効率Kcd683lm·W−1

基本単位

基本単位として、次の7種類を定める。

時間: (単位記号: s)
セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細構造単位の間の遷移に対する放射の周期の9,192,631,770倍の周期の継続時間
長さ: メートル (単位記号: m)
真空中で光が1秒の299,792,458分の1の時間に伝わる長さ
質量: キログラム (単位記号: kg)
プランク定数を正確に6.62607015×10−34J·sと定義することで定まる質量
電流: アンペア (単位記号: A)
電気素量を正確に1.602176634×10−19クーロンと定義とすることによって定まる電流
熱力学温度: ケルビン (単位記号: K)
ボルツマン定数を正確に1.380649×10−23J·K−1と定義とすることによって定まる温度
物質量: モル (単位記号: mol)
6.02214076×1023(アボガドロ定数)個の要素粒子を含む系の物質量
光度: カンデラ (単位記号: cd)
周波数540THzの単色放射を放射し、所定の方向での放射の強さが1/683ワット毎ステラジアンである放射体(光源)のその方向での光度

組立単位

一つの物理量には単一のSI単位が対応するように決められているが、7種類以外については、組立単位という規定により表現される。

大きく、基本単位を用いて表わされるものと、独自の記号で表わされるものとがある。

独自の名前を記号を持つSI組立単位

ここでは、力のニュートン、圧力のパスカル、熱量のジュールなどのように、よく用いるが、しかし基本単位だけで表わすと繁雑となるものに対して、便利なようにSI単位を組み立てた式の別名として定義している。

SI第9版の表4では22種類が定義されている。

組立量SI組立単位
名称記号SI基本単位での表現他のSI単位での表現
平面角ラジアンradm∙m−1 
立体角ステラジアンsrm2∙m−2 
周波数ヘルツHzs−1 
ニュートンNkg∙m∙s−2 
圧力・応力パスカルPakg∙m−1∙s−2N/m2
エネルギー・熱量ジュールJkg∙m2∙s−2N∙m
仕事率・工率ワットWkg∙m2∙s−3J/s
電荷・電気量クーロンCA∙s 
電位差・起電力ボルトVkg∙m2∙s−3∙A−1W/A
電気容量ファラッドFkg−1∙m−2∙s4∙A2C/V
電気抵抗オームkg∙m2∙s−3∙A−2V/A
コンダクタンスジーメンスSkg−1∙m−2∙s3∙A2A/V または 1/Ω
磁束ウェーバーWbkg∙m2∙s−2∙A−1V∙s
磁束密度テスラTkg∙s−2∙A−1Wb/m2
インダクタンスヘンリーHkg∙m2∙s−2∙A−2Wb/A
セルシウス温度セルシウス度 
光束ルーメンlmcd∙sr 
照度ルクスlxcd∙sr∙m−2lm/m2
放射能ベクレルBqs−1 
吸収線量グレイGym2∙s−2J/kg
線量当量シーベルトSvm2∙s−2J/kg
触媒活性カタールkatmol∙s−1 

基本単位で表わすSI組立単位

SI第9版の表5では13種類が定義されている。記号については、典型的な記号として記載するのみで、定義はされていない。

組立量SI組立単位
名称記号SI基本単位での表現
面積平方メートルAm2
体積立方メートルVm3
速度メートル毎秒vm∙s−1
加速度メートル毎秒毎秒am∙s−2
波数毎メートルσm−1
密度(質量密度)キログラム毎立方メートルρkg∙m−3
面密度キログラム毎平方メートルρAkg∙m−2
質量体積(比容積)立方メートル毎キログラムvm3∙kg−1
電流密度アンペア毎平方メートルjA∙m−2
磁界の強さアンペア毎メートルHA∙m−1
(物質量の)濃度モル毎立方メートルcmol∙m−3
質量濃度キログラム毎立方メートルρ, γkg∙m−3
輝度カンデラ毎平方メートルLvcd∙m−2

独自の記号を持つSI組立単位

SI第9版の表6では24種類が定義されている。

組立量SI組立単位
名称記号SI基本単位での表現
動粘度パスカル秒Pa∙skg∙m−1∙s−1
力のモーメントニュートンメートルN∙mkg∙m2∙s−2
表面張力ニュートン毎メートルN∙m−1kg∙s−2
角速度・角周波数ラジアン毎秒rad∙s−1s−1
角加速度ラジアン毎秒毎秒rad/s2s−2
熱流密度・放射照度ワット毎平方メートルW/m2kg∙s−3
熱容量・エントロピージュール毎ケルビンJ∙K−1kg∙m2∙s−2∙K−1
比熱容量・比エントロピージュール毎キログラムケルビンJ∙K−1kg−1m2∙s−2∙K−1
比エネルギージュール毎キログラムJ∙kg−1m2∙s−2
熱伝導率ワット毎メートルケルビンW∙m−1−1kg∙m∙s−3∙K−1
エネルギー密度ジュール毎立方メートルJ∙m−3kg∙m−1∙s−2
電界強度ボルト毎メートルV∙m−1kg∙m∙s−3∙A−1
電荷密度クーロン毎立方メートルC∙m−3A∙s∙m−3
表面電荷密度クーロン毎平方メートルC∙m−2A∙s∙m−2
磁束密度・電気変位クーロン毎平方メートルC∙m−2A∙s∙m−2
誘電率ファラッド毎メートルF∙m−1kg−1∙m−3∙s4∙A2
透磁率ヘンリー毎メートルH∙m−1kg∙m∙s−2∙A−2
モルエネルギージュール毎モルJ∙mol−1kg∙m2∙s−2∙mol−1
モルエントロピー・モル熱容量ジュール毎モルケルビンJ∙K−1∙mol−1kg∙m2∙s−2∙mol−1∙K−1
(X線、γ線)照射線量クーロン毎キログラムC∙kg−1A∙s∙kg−1
吸収線量率グレイ毎秒Gy∙s−1m2∙s−3
放射強度ワット毎ステラジアンW∙sr−1kg∙m2∙s−3
放射輝度ワット毎平方メートルステラジアンW∙sr−1∙m−2)kg∙s−3
触媒活性濃度カタール毎立方メートルkat∙m−3mol∙s−1∙m−3

非SI単位

非SI単位の併用

例えば、SI単位の時間は、あくまで秒(s)である。しかし、1時間を3.6ksなどと表現するのは日常では不便であり非現実的であるので、分・時・日などの一般的に日時を表現する単位はSIと併用して利用できる。

角度の度・分・秒や、体積のリットル、容積のトンも同様である。

電子ボルトや天文単位なども、実験的に数値が示されているものは、その分野に限定して利用が許される。

第9版

SI第9版の表8に残されている、SI単位系で併用が許されている非SI単位は次の通り。古い版では様々な単位が書かれていたが、現在ではこれしか残されていない。

名称記号SI単位による値
時間min1min=60s
h1h=60min=3 600s
d1d=24h=86 400s
長さ天文単位au1au=149 597 870 700m
平面角°1°=(π/180)rad
1′=1/60°=(π/10 800)rad
1″=1/60′=(π/648 000)rad
面積ヘクタールha1ha=1hm2=104m2
体積リットルl または L1l=1L=1dm3=103cm3=10−3m3
容積トンt1t=103kg
質量ダルトンDa1Da=1.660 539 066 60(50)×10−27kg
エネルギー電子ボルトeV1eV=1.602 176 634×10−19J
比の対数ネーパーNp※1Np=1
ベルB※1B=(1/2)ln10 Np
デシベルdB※1dB=(1/10)B

ダルトン(Da)と統一原子質量単位(u)は等価である。1u=1Daである。

ネーパー、ベル、デシベルについては、説明のみで定義に値は書かれていない。上記は参考である。

SI接頭語

単位に接頭語を付けることで、巨大な値または微小な値を簡潔に表現することができる。

但し実際に使われるものは限定されており、どちらかというと日常用のもの。科学の世界ではべき乗で表示することが多い。例えば、42.195kmではなく4.2195×104m。

SI第9版の表7では10±24までの単位が定義されている。

1,000,000,000,000,000,000,000,0001024 ヨタ yotta (Y)
1,000,000,000,000,000,000,0001021 ゼタ zetta (Z)
1,000,000,000,000,000,0001018 エクサ exa (E)
1,000,000,000,000,0001015 ペタ peta (P)
1,000,000,000,0001012 テラ tera (T)
1,000,000,000109 ギガ giga (G)
1,000,000106 メガ mega (M)
1,000103 キロ kilo (k)
100102 ヘクト hecto (h)
10101 デカ deca (da)
10−1 デシ deci (d)0.1
10−2 センチ centi (c)0.01
10−3 ミリ milli (m)0.001
10−6 マイクロ micro (µ)0.000 001
10−9 ナノ nano (n)0.000 000 001
10−12 ピコ pico (p)0.000 000 000 001
10−15 フェムト femto (f)0.000 000 000 000 001
10−18 アト atto (a)0.000 000 000 000 000 001
10−21 ゼプト zepto (z)0.000 000 000 000 000 000 001
10−24 ヨクト yocto (y)0.000 000 000 000 000 000 000 001

恐らく2022(令和4)年に、大きい方と小さい方それぞれ二つずつ新たなSI接頭語が増える見込みである。それぞれQ/R、q/rが予定されている。

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